3回
2017/11 訪問
舌の記憶
二度目の中目黒。La Bittaとしては初訪問。
前回はテーブル席でしたが。今回は一人での訪問だったので、カウンター席に。何気なく厨房に目を向けると、調理している様子が一望できる。オープンキッチン。そういえば、日本橋フェアドマ、兜町コルヴィエラでは厨房の様子はわからないようになっていた。そのあとの、京橋コッレベレート、広尾フェアドマ、永田町インカンティーナも同じ。登戸コルティヴァーレは厨房が高い位置にあったので、調理の様子はわかるが、手元前は見えない。これは貴重な体験。ライブ感のあるシート。かぶりつき。
料理はおまかせで。
「岩手産ホロホロ鳥の白レバーとハツのレバーペースト」
ホロホロ鳥といえば熱帯地方の生き物から、東北の生産はどのようになっているのか、食事の後でふと思った。生産地の花巻は温泉があるので、床暖房を利用し、岩手のお米で生育。だから、力強いんだ。
レバーペーストといえば、赤レバーだが、これは脂肪分の多い白レバーに。そこにハツを加えて深い味わいに。とろけるレバーペースト。
ワインはカ・デル・ボスコ。すすすーと一気になくなっていく。
「前菜盛り合わせ」
志津川産水ダコ、メカジキ、サーモン、ウニと自家製カラスミ、モルタデッラ、フロマージュ・ド・テート。
水ダコの足の直径を確認すると、その大きさに驚く。志津川でhあ立派なタコがよく生育するそうだ。ウニとカラスミは松橋さんらしい、隠れた豪速球の逸品。ほんの一口の、一瞬の出来事だが、この組み合わせに心を射抜かれた。そして、最近始められた、自家製シャルキュトゥリーもならぶ。
ここから気になっていたコルスワインをスタート。
「2016 Corse Calvi Blanc / Clos CULOMBU」
フランス・コルス島(コルシカ島)北部のvin de Corse Calvi(AOC)。コロンブスの出身地との説もあるそうだ。
はちみつ、温度が上がって開いていく。
ぶどう品種はヴェルメンティーヌ。リグーリアではヴェルメンティーノ。
農業コンクール(Général Agricole Paris)2017の金賞。
「トリッパのペンネ、ンドゥーヤのイカスミソース」
カラブリア料理。ンドゥーヤの辛さが心地よい。トリッパもペンネもイカスミで真っ黒。ペンネは形からわかるがトリッパは食べてみないと、トリッパか別の食材かがわからなかったのでちょっとした闇鍋風に。
涸沢のすてきなイカスミ。意外と出会えることは少ない。
もちろんワインは飲み干している。そこで、同じ生産者のロゼに。
「2016 Corse Calvi Rosé / Clos CULOMBU」
アタックもアフターも素晴らしい。
セパージュはNiellucciu(ニエルッチュ) 40%, Sciaccarellu(シャッカレール) 40%, Cinsault(サンソー) 20%。いずれもコルス島の品種。
こちらも金賞受賞。
イカスミソースを拭い尽くしたいので、パンを注文。修行時代の丸パン。グリッシーニに似ている味わい。
「マンガリッツァ豚、キノコとロゼワインソース」
メインは大きなマンガリッツァ豚。きめ細かな肉質はそのままでこの分厚い塊肉に火が通るなんて驚き。逸品。この料理をハンガリーの首相が知れば、日本の漫画家※と同じく、国賓として招待されると思う。
ソースは酸味のあるソースでロゼワインでワインにもちろん合う。
※松本救助著『ブタが好きすぎてハンガリーの国賓になりました』
「ドルチェ」
柿のタルト、焼きリンゴなど。甘さの加減がちょうどよい。
お決まりの自家製レモンチェッロで。そしてエスプレッソでエンディング。
相棒へのおみやげとして、自家製シャルキュトゥリーの積み合わせを購入。この料理が自宅で味わえるのは嬉しい。
舌の記憶。忘れることのない記憶。味、香り、歯ざわり、ナイフを入れた時の音、ワインとのマリアージュ、お皿の景色、きめ細かな肉質。しみじみ美味しかった。
スマートなサービス、真剣な調理スタッフの姿。素敵なチーム。
2017/11/11 更新
2017/06 訪問
アミューズがいっぱいのスペシャルなランチコース
2017年6月初訪問
オープンのお知らせをいただき、以前から計画していた東京旅行に食事の予定を組み込みシェフおまかせのコースで予約を入れさせていただきました。
東急田園都市線「池尻大橋」から徒歩5分。目黒川沿いに歩く。閑静な住宅街。数年前から桜などで大混雑していることが嘘のような静けさ。レストランが少ないので、すぐにお店の場所に気がつく。マンションの1階にあり、雰囲気の良い素敵なファサード。お店の扉を開くと、日本橋フェアドマ、兜町コルヴィエラの思い出が蘇る。長いソファーシートのテーブル席、フラーキのUCサンプドリアのユニフォーム、ライティングの具合など。席数はフェアドマと同じぐらいかな。
最初は「カ・デル・ボスコ フランチャコルタ ブリュット キュヴェ プレステージ(Ca'del Bosco Franciacorta DOCG Brut Cuvee Prestige)」で乾杯。はちみつのニュアンス。久しぶりに美味しいフランチャコルタを頂いた。
最初の料理が登場。蟹の甲羅のようなものに乗っている。蟹のアイス? いや、ちがう。よくみるとホヤの殻だ。そう、「ホヤのシャーベット」。ホヤの他に、マンゴー、パッションフルーツを使っているとのこと。程よい酸味、それと海の香り。たしかにホヤにはマンゴーのニュアンスもあるので、合うのだろう。それにしても、なんて滑らかな食感なんだろう。とても手間がかかっていると思う。表現は良くないかもしれないが、「変態」的な食への探求に脱帽。まさにアミューズ。
次はシェフの新旧ハムが揃った「前菜盛り合わせ」。
奥から、生後数ヶ月の子豚のハム。絹のような食感。脂身もおなじ。これも驚きの一品。マンガリッツァ豚のジェルのせを思い出す。それと最近作り始めたドイツ風のソーセージ。切り口にピスタチオが見える。食べてみると、弾力感がある。美味しい。その隣が見た目にも鮮やかな、夏みかんと穴子のテリーヌ。タコとトマト、切り口の美しいパテ、中央に大粒の赤貝とブルーベリー、きゅうり。前菜の盛り合わせで、さらにテンションが上がる。ワインはこのまま「カ・デル・ボスコ」で続ける。
そして定番の「ジェノベーゼのリングイネ」これも、いただきたかったので大満足。ジェネベーゼソースのパスタへの絡まり具合が良い。
そしてこれも定番の「ウニとカラスミのタッリアテッレ」。今朝届いたばかりの生雲丹。美味しい物同士がさらに新たな旨味を産んでいる。
シェフのコースでパスタ二品は外せない。
そして、セコンドピアットは「骨付き鶏のカチャトーラ」鮮やかなトマトソースが印象的。たっぷりある。ナイフで骨から身を削りとり、トマトソースをたっぷり纏わせていただく。コレもお美味しい。最初は量が多いかな、と思ったが、一気に食べきってしまった。骨の周りが美味しいので、最後は手に持ってしゃぶりつくす。そしてソースも全てスプーンで平らげてしまった。「カ・デル・ボスコ」のすでに飲みきってしまったので、コレに合わせたのが「オルトレポ・パヴェーゼ・バルベーラ(Oltrepo Pavese Barbera)」、力強い赤にも負けない美味しさ。
最後に「ドルチェ盛合せ」とエスプレッソ。それと自家製の「夏みかんチェッロ」。
ドルチェはクレープと二種のジェラート。チョコレートケーキ、夏みかんの砂糖漬け。シェフのドルチェも多彩な顔を持っている。乙女チックな部分、それと力強さ。
最後にチェッロをいただいて、少し興奮気味だった気持ちを落ち着かせる。綺麗なオレンジ色。この一品だけでも再び訪れたい気持ちになる。
店内から外に目を向けると目黒川の桜の木々が鮮やかな緑をたたえている。初夏の午後の気持ちのよい空気が流れている。テラスでゆっくりと食事もするのも良いかもしれない。
再び「松橋さんち」で食事をする事ができ、嬉しい気持ちでお店を出る。ほろ酔い気分で目黒川にそって来た道を戻る。中目黒は初めて訪れたが、これから思い出の場所になっていくだろう。
2017/06/11 更新
2018年11月再訪問 ディナー
神戸から飛行機で移動し、直接池尻大橋に。商店街を通り抜け、目黒川沿いに歩くと、ラ・ビッタの灯りが見える。
1年ぶり。SNSで美味しそうな料理を見ていると無性に食べたくなり、東京旅行を計画し、最初のレストランに選ぶ。シェフのおまかせコースで。ワインペアリングも。
最初はスプマンテで乾杯。
定番のオリーブペーストから始まる。14年前に頂いた時から変わらない「美味しさ」の驚き。言葉では表せない。
以前頂いたときも、「進化」していると思ったけど、今回も香辛料の種類や、オリーブの感触が変わり、また「進化」していると感じた。この「進化」の連続にシェフの料理に惹きつけられる理由がある。
前菜の盛り合わせ。コッパ、田舎風テリーヌ、モルタデラ、鯖の燻製など。シャルキトゥリーの塩のこなれ具合が良い。合わせていただいたワインがコルシカのユヌ・イル。ロゼワイン。ぶどうは「サンジョベーゼ」。産地により様々な呼び方があり、コルシカ島では「ニエルッチョ」。ユヌ・イルは、まさに「島」。
Une Île ... Rosé Domaine Terra Vecchia IGP Île de Beauté
ユヌ・イル ロゼ ドメーヌ・テッラ・ヴェッキア IGP イル・ド・ボーテ
生産地:フランス、コルシカ島
生産者:Dom. Terra Vecchia (Clos Poggiale)
ドメーヌ・テッラ・ヴェッキア (クロ・ポッジャーレ)
http://www.clospoggiale.fr/index_FR.php
品 種:Nielluccio (ニエルッチョ) 100%
トリッパのスープ。シンプルだけど、奥深い美味しさ。臭みはなく、美味しさだけ。
食感は柔らかく、すすーと胃の中に収まる感覚。松橋さんのトリッパ愛を感じる料理。日本橋で頂く前は、苦手な食材だったが、今では大好物に。
合わせていただいたのが、アルフォンソ・ロートロの白。
Alfonso Rotolo San Matteo
アルフォンソ・ロートロ サン・マテオ
生産地:イタリア、カンパニア州
生産者:Alfonso Rotolo アルフォンソ・ロートロ
http://www.alfonsorotolo.it
品 種:Fiano (フィアーノ) 100%
パスタもちろんジェノベーゼ。今回は平らなパスタで。ジェノベーゼ感が増す。
ノストラリーノは、ジェネベーゼにぴったりのワイン。おお、たしかに。
2016 Nostralino DOC Portofino Casa Sabaino
ノストラリーノ DOC ポルトフィーノ カーサ・サバイノ
生産地:イタリア リグーリア州ジェノヴァ
生産者:Niasca Portofino ニアスカ ポルトフィーノ
https://www.niascaportofino.it
品 種:Vermentino (ヴェルメンティーノ), Bianchetta Genovese (ビアンケッタ・ジェノヴェーゼ)
高知産ホウボウのリゾット。内臓も全てを使ったスープで。旨味の塊。様々な香り、味覚。お米の食感が絶妙。五感全てが喜んでいる。こんもりと平皿に守られた姿は絵画のようだ。
ワインはオルメアスコ・ディ・ポルナッシオDOCのロゼ(Sciac-trà)、オルメアスコ。リグーリアの品種。
Lupi Ormeasco di Pornassio Sciac-trà DOC
ルピ オルメアスコ・ディ・ポルナッシオ シャクトラ
生産地:イタリア リグーリア州 DOC オルメアスコ・ディ・ポルナッシオ
生産者:Lupi
http://www.casalupi.it
品 種:Ormeasco(オルメアスコ)
宮古産キンキのロースト。オリーブオイルを全体にかけながら焼いて、皮目、ヒレはパリパリに、身はふっくらとしている。おいしい。
カラブリアの赤をセレクトいただく。この魚料理にはこの赤はピッタリと合う。
2012 Aziende Agricola Du Cropio Cirò Damis Riserva
生産地:イタリア、カラブリア州
生産者:Aziende Agricola Du Cropio ドゥ・クロピオ社
品 種:Gaglioppo(ガリオッポ)
そして、驚きのスペシャリテ。千葉産乳吞み仔豚。生後70日の乳しか食していない仔豚、マイアリーノ。寝ているみたい。かわいそうより、美味しそうが勝る。耳と舌の部分を取り分けていただく。皮まで柔らかく、きめ細かい肉質。豚肉とは思えない。禁断の美味しさ。豚の耳といえば沖縄料理のミミガー。軟骨のコリコリとした食感を思い出すが、これはトロリとコラーゲンたっぷりのタプタプした食感。そして豚の舌。豚タン(ブタタン?、トンタン?)は、しっかりとした肉質だが、濃厚な味わいで、不思議なおいしさ。
Rosato Costa De Vigne Massimo Alessandri
ロザート コスタ デ ヴィーニェ マッシモ アレッサンドリ
生産地:イタリア、リグーリア州インペリア
生産者:Massimo Alessandri マッシモ アレッサンドリ
品 種:メルロ100%
最後は相棒の誕生日のデザートプレート。
シェフの料理のこだわりはデザートも同じクオリティで。
松橋シェフの料理は、お皿を見たときから始まる。彼のエスプリは、香り、温度、塩加減、旨味、ワインなど、様々な要素で現れてくる。お店に訪れた人はそれに魅了され、心を掴まれる。