4回
2021/04 訪問
薩摩の鬼才、感涙のフュージョン
鹿児島県出水市、辺鄙な立地ですが、あっという間にスターダムに駆けあがって行きそうなお店でして、九州随一の予約困難店となることを予感させる、そんな若いお店です。
私のグルメな知人もこちらにお伺いして、素晴らしかったとのこと。こちらの魅力が徐々に知られつつあるようです。
実際に、予約も増えているとのことで、コロナが落ち着いたら、さらに予約者が増えていくと思います。
現在、最も押さえておくべきお店の一つですよ。
今回は3人でお伺いしまして、一人がドライバー。私はフルペアリングコースを楽しませていただきました。
最初は霧島サーモンのパテをサクサクの生地で包んだお料理。
エディブルフラワーに包まれており、エディブルフラワーは自家製のようです。
エディブルフラワーも最近は高級品になっていますので、こちらも一緒にいただきます。
ケッパーも入っており、滑らかさ、霧島サーモンの美味しさが引き出された一品。素晴らしい!美味しい!
合わせるペアリングは、ロゼワインとロゼシャンパンからスタート。
喉の渇きを潤す泡と、料理に寄りそうワインを自らの選択で楽しめる2杯出しは反則!(笑)
続いてそら豆等の緑豆を使ったスープですが、食べるスープがコンセプト。
ハムとチーズの出汁が入っているとのことで、動物性の旨味もありつつ、冷製のスープとしらすの美味しさがベストマッチ。同行者はこのスープが本日のスペシャリテと言っていましたが、確かに複雑性がありつつ、素材の旨味が感じられる素晴らしい品でした。
続いてガストロバックを用いたアスパラガスと富山のホタルイカに地元産の卵を乗せた品。
ホタルイカの美味しい苦みを卵の柔らかさやチーズの旨味で包みつつ、アスパラの溌剌とした美味しさと合わせています。
これには王道の白。料理の性質的に繊細なので、泡や白、そしてロゼと相性よろし。
桜海老と山菜のパスタはバーニャカウダで楽しみます。春をお皿で体現しています、心が洗われる品。
桜海老が香ばしく食感のアクセントにも。
ワインが赤?と思いましたが、山菜とバーニャカウダの存在感が強めに出ているため、赤ともマッチ。
うるいが美味しいんですよね~。
ホウボウは下に茹でられた赤米が敷かれており、ホウボウと砂地を表現しているお皿!(笑)
ホウボウは皮目がしっかりと焼かれており、ガストロバックを使われています。
身質も旨味がギュッと詰まっていて味わい深いです。
トマトスープ、蛤、あおさが入ったスープは、塩味の濃さではなく、トマトを中心とした味わいの濃さが特徴的。
赤米の香りも良いアクセント。
私はこちらが今日一番好きなメニューかな…トマトが効いていてコンソメのような旨味もあり、これはお酒とも合いますね。
こちらと合わせるのは、白ワインと焼酎!焼酎は麦焼酎とトマトスープを合わせています。
鹿児島の御当地アルコールですので、焼酎を使いたいとの想いがあるようでして、料理に合わせたペアリングを研究されていますね。
ただ、焼酎はやはり難しい素材。焼酎の香りがどうしても強く出ますから、これをどう料理に合わせるか。繊細な料理とは合わせにくいですよね。
ノンアルコールペアリングでスパイス使いをされていましたので、焼酎もカルダモンを漬けるであったり、玄米を炙って香ばしさを移すであったり、南国系のドライフルーツを使ったり、といった香り処理のアプローチも面白そうですね!
後半のシェリーと黒糖焼酎を混ぜるトライは、一つの選択肢としてとても興味深いものでした。
さて、続いては赤鶏さつまのサルシッチャをベースとしたパスタ。
カルダモンが効いていて、味わいはグリーンカレー(笑)これは面白い。木の芽も使ってあり、イタリアンを忘れさせてくれますが、オレンジオイルとエディブルフラワーで爽やかさを醸し出しています。
メインは鹿児島うんまか豚の炭火焼き。脂がしつこくなく炭火の香りが良く…ワインは恐るべき3種合わせ…
うんまか豚、初めて食べましたがポテンシャル高い!脂も美味しいのでイタリアンに合う豚です。
赤と合いますが、白で脂を消し去るのもさっぱりで、楽しいペアリングを体感させて頂きました。
ペアリングに関しては、ノンアルコールのペアリングも含めて、試行錯誤が結果に繋がっているのでしょう。
ペアリングに関して、九州随一の研究家でいらっしゃると思いますね。
紅甘夏、そら豆のスイーツもお酒と合うものを作っていただきまして、本日も大満足のコースでした。
若き天才シェフの作る料理は驚きと発見に満ち溢れています。
料理を楽しんで作られていることもよくわかりますし、その創造力は地方レベルを超越しています。
地方ならではの食材を使われており、この地で紡ぐストーリーを食を通じて示すこのスタイルは、遠くから足を運んででも頂くべき料理でしょう。
今回も素敵な時間をありがとうございました!
また次回の予約も入れさせていただきまして、早くも今から楽しみです。
距離的に近かったら…と思わずもがなですが、四季折々でお伺いするのを楽しみにしています!
ちなみに別業態として、カジュアルにワインとイタリアンを楽しめる場を月1回作られているよう。
地元の方も是非、この機会にこちらのお店をまずはカジュアルに楽しまれてはいかがでしょう?
また、シェフのインスタに美しい写真が掲載されていますので、そちらも是非、検索して見られてくださいね!
2021/10/24 更新
2020/12 訪問
薩摩の鬼才、感涙のフュージョン
鹿児島県出水市、初訪問の衝撃が冷めやらぬ中、初回と同じメンバーでお伺いする予定でいましたが、諸事情で2人でお伺いすることになりまして、色々とご迷惑をおかけしました。
夜に行くと雰囲気もまた昼と違っており、ムーディ。
温かく迎えていただきまして、この接客力の高さは天性のものですよね。
コロナ対策もバッチリで、安心して食事することができます。
この日は私はフルペアリング、またコースは量を多めに頂いています。
料理のスタートは、鳩のスープと油分を与えて生き返らせた出汁をとった後のお肉。お肉はツナ風。
茨城の二宮さんの鳩と言うことで、小鳩は手に入らない状況。親鳩なのでスープでの提供なのですが、お肉も黒胡椒のアクセントもあり、実に美味しい。
スープの味わいは、他のどんな食材とも違っており、最初から非日常な一品を頂きました。
これで胃袋も活性化♪
続いて人参のムースにイタリア製のカラスミを乗せた品。キャロットラぺを重ねることで、食感と人参の味わいの複層化が図られています。
ワインとの相性が良く、カラスミの良さもしっかり引き出された一品です。
続いては、平目を蕪と白菜と合わせています。
4kgの平目とのことで、身が大きく、ふっくらとしていますね。
アラなどから取ったお出汁をガストロバックを使って注入されており、蕪も小さなサイコロ状に焼き目を付けたアプローチで、普通のソースのみの料理とは一線を画します。
白菜の甘さもまた美味しいですし、白菜の食感も良し。昆布出汁といった和の味わいが隠されているのも面白い!
ここでガストロバックの調理機材をいつから使われていますか?とお聞きすると、既にシェフがいらっしゃった際にはあったとのこと。
考えてみれば、このような福祉施設の中に、これだけ尖った料理を出すお店を作る決断をされたオーナーは、相当のこだわりをお持ちなのでしょう。
このような素晴らしい料理とお酒と会えることについては、オーナーにも感謝感謝です。
地元の足赤海老のパスタは、パプリカを練り込んだパスタと。
クリスマスカラーでの提供です(笑)
ソースは足赤海老のビスク状のソースでして、これは旨味が口の中を満たします。
足赤海老の身にはソースがかかっていないため、ぷりぷりとした食感、甘みがある身質をシンプルに味わえますし、パスタの途中で食べると、濃いビスクを一旦中和する役割も担ってくれます。
そして、お店のこの時期のスペシャリテは、北海道産の真鱈のグラタン。
真鱈の身、白子、そしてほうれんそうが主役。
ベシャメルソースを使っておらず、グラタンとはいえ、重くないのが特徴。
じゃがいもも中に入れるのではなく、ポテトチップとして上部に乗せてあり、食感も良し。
通常のグラタンでほうれんそうはあってもなくても…という感じなのですが、こちらの料理では、隠れた主役がほうれんそうではないかと思うぐらい、ほうれんそうが良い仕事をしています。
トリュフが乗っているのと、食べた瞬間に一番感じるのですが、ポルチーニのエッセンスも少々入っているところが、イタリアンのグラタンですね。
鱈の出汁を上手に使ったこのグラタンは来年も食べたいです。
ここで、リクエストしてしまっていた、鹿肉。。
通常は前菜として出て来るそうですが、我々は異常に食べるので、メインに昇格していただきました。
オリーブオイルと塩でシンプルにいただきます。
塩も最小限にしていただくと、きめ細かな肉は、上質の肉質。地元で取れた鹿とのことですが、こんなに美味しい鹿が獲れるなんて凄いポテンシャルの地域です。
そうそう、綺麗な身質に合わせるかのように、胡椒も強くないものをセレクト。考えられていますね~。
いや、これも来年も絶対に食べたい料理です。
さて、メインが2つになってしまいましたが、牛タンの煮込み。
メインで煮込みはこちらのお店では初のチャレンジとのことですが、牛タンの良さである食感は残しつつといったタンシチューとは全く違う品。
チョコレートやレーズン、松の実といった様々な要素を複雑に積み上げていく料理でして、酸味が感じられるため、クドくなく、飽きずに食べ進められます。そして添えられている牛蒡が良い仕事。
ビーツは地元の生産者さんのものとのことで、食材や生産者さんに恵まれた土地だと、実感します。
蜜柑のソルベで口直しをして、ヘーゼルナッツのスイーツに。
最後はカフェで終了ですが、こちらのスイーツのレベルの高さも半端ない。
さて、この日はフルペアリングでしたが、前回の訪問時よりも、かなりセレクトの意図やワインのクオリティが上がったように思えました。(今回は色々なテストも兼ねて多く出していただいています。)
特にシュワシュワ系を敢えて、トップバッターに持って来ないチャレンジ、私は好きですよ!
また、これもオーナーの意向もあるのでしょうけれども、個性があるワインが多く、説明も丁寧なので、飲んでいて楽しいです。
ノンアルコールもペアリングしてただきましたが、飲み物をそのまま出すのではなく、香辛料等も使われていまして、興味津々。
ノンアルコールペアリングは甘さにいかに頼らずに、料理に比肩する重みを出すかがキーなので、例えば野菜を使ったノンアルコールカクテルなんかが一品あっても面白いかもしれませんね。
今回は、2回目の訪問ですが、2回目の訪問が一番ドキドキします。
1回目がたまたまアタリだったのではないかと思うところがありまして…(笑)
しかし、こちらのお店は間違いなかったです。むしろ評価上昇!
シェフとソムリエの方、お二人の雰囲気が本当に素敵ですし、居心地が良いというのもこちらのお店を語るに欠かせないピースですね。お二人とも料理が大好きなのがわかります。
初回の口コミで、シェフを天才肌と書きましたが、天才に変更しておきます。
この国のどこにあったとしても生涯通い続けたいお店!(食べログGoldの表現です)
遠いのが悩ましいのですが、季節毎にはお伺いしたいと思い、次回の予約も入れさせていただきました。
今後も生涯よろしくお願いします!
コロナ禍ではありますが、予約もじわりと増えているようで、煽るようですがプラチナシートにすぐ急上昇するお店だと思いますよ。
不便な立地であることを差し引いても、すぐに行くべきお店だと思います。
2021/10/24 更新
2020/10 訪問
薩摩の鬼才、感涙のフュージョン
鹿児島県出水市、その出水市の山奥にひかりの郷なる温泉施設があり、そちらに併設される形でもう3年も営業されているという隠れたフュージョンのお店。
シェフは東京の名店フィオッキでセカンドを務めた経歴があり、出身ではないものの地方の暮らしを望まれてこの地にいらっしゃったとのこと。
今回は3人でお伺いをしましたが、1組営業をベースとされているとのこと。
2人はペアリングでお願いしまして、1人はソフトドリンクベースです。
最初は黒舞茸のフリット、ビール衣でカラッと揚げられています。
山形産、香りの高さが素晴らしく、ミネラル感がある塩との相性バッチリ。
シャンパンからスタートと、非常に豪勢なスタートとなりました。
南瓜と鶏のレバー、甘みを複層的に重ねながら、中の胡椒で驚き…これ、地方レベルを超えています(笑)
養殖のむじょか鯖は、皮目を炭火焼きにしながら、身はレア。
様々な食材を重ねて使うことによって、香りも食感も素晴らしく、オレンジの香りが絶妙だったな~。
太刀魚はあおさの焼きリゾットと。トマトソースが美味しすぎて…これも衝撃的。
リゾットもあおさの風味が絶妙に乗っています。
そして、すっぽんのスープには、鹿のエキスが入っており、その深みに鳥肌立ててしまいました。
ラグーボロネーゼは、ラグーがリッチな風味であり、脂ではなく肉そのものの旨味を味わえる感覚。
仔羊はロゼで仕上げられており、脂の部分はサルシッチャにして焼き切り。
ピュアな肉の旨味に、ワインに合うサルシッチャのコンボは、仔羊の旨味を一皿で体現してくれます。
スイーツまで抜かりなく美味しく、食後感も最高です。
少量多皿でして、美味しすぎたせいか、私はまだ食べられそうなお腹具合でしたが、一般的にはお腹にしっかりの量だと思いますよ!
そして、こちらのコースに欠かせぬペアリングは焼酎が出てきたりして遊び心を持ちながらも、主力のワインに関するセレクト力が高いです。
奇をてらわず、しっかりと美味しいワインを提案していただけます。
お二人で回しておられますが、楽しげに仕事をされていまして、雰囲気も非常に良いお店です。
メニューは月毎にガラッと変えられるそうですが、この完成度の高さよ…
天才肌の料理人と言って差し支えないでしょう。
遠いのにすぐに予約を入れてしまいました。
こちらのお店、席数が少ないので、すぐにプラチナシートになってしまう予感がします。
気になる方はすぐに予約を!
2020/10/18 更新
※ご訪問される方に関して、本レビューよりも、最新の訪問者様方のレビューを見て頂く方が、特にペアリング等しっくりくるかと思います。(私はしばらくお伺いはお休みです)
鹿児島県出水市、若き天才シェフとあくなき向上心のソムリエ、お二人で営業をされているお店です。
辺鄙なところにあるのですが、既に4回目の訪問でして、今回は3人でお伺いです。
ハンドルキーパーよ、ありがとう!!!感謝感謝!!!
最近は席も埋まってきており、私の知人も予定が合わずに、現在もシートを調整中だとか。
気になったら今のうちに即予約ですよ!!!
さて、この日も温かいお出迎え、この雰囲気も好きだな~。
ワインはフルペアリングで、白ワインからスタート。ワインペアリングも熟練の雰囲気。
まずはアコヤ貝、真珠を取るための貝ですが、実はその美味しさは折り紙つきでして、私は大好きな貝。
パセリとバジルの爽やかな風味、玉葱とナッツの変化、蕎麦の実が生み出す楽しさ、早速この1皿目で、こちらの世界にグッと引き込まれます。
炙った貝柱の香ばしさと、爽やかなソースが見事に調和しています。
トウモロコシのスープ、この時期、トウモロコシのスープを各店出していますが、圧倒的にこちらのスープが美味しい。
私は余りトウモロコシが好きではないのですが、こちらのスープは、クリームを使いながらトウモロコシの甘さを最大限に活かしつつ、トリュフのニュアンスを交え、焦がしバターでさらに濃厚に。
トウモロコシのスープでは過去一番!トウモロコシの皮と芯で出汁を取っているのが地味に効いています。
イサキはこちらの真骨頂である骨等から出汁を取ってのガストロバック。
皮の香ばしさにガストロバックでとろとろの身、胡瓜をライムで爽やかに。
漬物のニュアンスもありますが、こちらもアプローチが天才的。
以前グラタンで使ってあったポテトチップスで食感をほうれん草のパウダーで味に深みを。
穴子はリゾット風、赤ワインで煮てあり、ハーブ類と野菜の旨味も閉じ込めてある深さ、これも絶品。
穴子の新しい顔を見ることができまして、ワインを使っているだけあって、ワインとの相性も抜群。
ここで富乃宝山、焼酎アプローチも引き続き!ですね。
レモングラスを含ませているだけあって、これまでで一番コースにマッチしています。
これは面白いな。
日本酒をこちらで見ませんが、wakazeのように振り切った日本酒もこちらなら上手に扱ってくださいそう。
次は面白そうな日本酒を進呈しようかしら。
タカエビはその甘さをどう活かすか、ズッキーニをカペリーニ風に切って夏野菜の爽やかさとマッチング。タカエビの頭等を使ったビスクソースが濃厚なだけに、夏野菜多めのアプローチが素敵。
カラスミもイタリアンな感じだな~。
素材の素晴らしさを1皿に表現、ねっとりしていて素晴らしい品です。
仔羊のパスタは、ギターを想わせる手打ちパスが、チーズもイタリアテイストなのに、ここにゴーヤを持ってくる天才性…仔羊の味わいの個性を引き立てる個性。これまた美味しい。
鴨は茨城の特選食材、入荷困難の二宮さんの鴨。
ピュアに美味しい、ミルクのニュアンスも入り、絶妙の火入れの応援を受け、これ以上ないクオリティ…これは旨いわ…
マッシュルームとトリュフ多めのソースも美味しいし、もうね、心も胃袋も大満足。
リクエスト素材が今回は手に入らなかったとのことでしたが、こちらの鳩があったから、無理してそちらにせずこちらをチョイスしたのでは?(笑)
これは特選素材!シェフのその選択、大正解ですよ!
フルーチェ風と説明があったブルーベリーのパンナコッタ風デザートも爽やかで美味しい。
続いては熊本のマンゴーをたっぷり使ったヨーグルト風味のジェラートは、キャラメルのほろ苦さでバランスを取っています。
いや、今回も最高でした。
てかね、このレベルで、次のハードルも上げてお伺いするのに、それを軽々と超えてくる素晴らしさ。
恐らく超ニアミスで、宮崎の信頼できるレビュアー様がいらっしゃっていたよう。
高評価、嬉しく思いますし、足を運んでいただき感謝です。
ペアリングもめちゃくちゃレベル上がってきており、遊び心で飽きさせないのもこちらの創意工夫を感じるペアリングの凄さ。
ノンアルコールペアリングもかなり楽しそうで、ドライバーの方も楽しめるお店と思いますよ。