4回
2020/06 訪問
世界観の強み
昨今のコロナ騒動で、お気に入りのお店は無事営業されているだろうかと気になりつつ
久しぶりに訪問。
以下当日のメニューに関して。
・新玉ねぎの冷製ビシソワーズ風。コンソメジュレ入り:
スターターのスープ。普通だと良くも悪くも大体予想が付く味の筈なんですが、いや~、
一味違った。コンソメジュレはスープの旨味だけでほぼ塩気を感じさせず、結果的に非常に
爽やかかつ上品な旨味だけが残ります。エグみも皆無。
・前菜:サーモン、ツブ貝、エビとグリーンピースのサラダ:
ザックリ言ってしまうとシーフードサラダなんですが、仕上がりの質が段違いです。
見た目はタルタル風なるも、グリーンピースのソース、塩加減等下世話さは微塵も無し。
豆、野菜、シーフード、ソース、食材全てが素晴らしいマリアージュを醸し出し、まろやかさと
品の良さが大変美味な一品でした。
・宮城のホタテ グラタン風:
アスパラと玉ねぎが刻まれたものが下に隠れており、焦げ目の付いたクリームソースと共に
頂くと、コクと野菜のあっさり感がバランス良く、見た目より軽い味わいで頂けます。
しみじみ美味い。
・甘鯛。豆苗入り桜海老のリゾットと共に:
鱗がカリッと仕上げられた甘鯛。塩味は殆ど感じられないが、下に敷いてある桜海老の
リゾットと共に食すと、何とも上品な魚介のコクが広がる。
フレンチというよりは、一流の懐石料理屋で出されるような一品でしょうか。
・信州牛のイチボのステーキ。オレンジ、野菜、筍添え:
相変わらずの肉の火入れの素晴らしさ。そしてオレンジと金時人参(だったかな?)の
ソース二種。フルーティかつ切れ味の良いソースと和牛の旨味・程良い脂が相性バッチリ。
美味い。焼いたオレンジも良いアクセント。
自家製デザートも相変らずの美味しさです。
タケウチさんは、いずれのお料理にも淡い味付けが共通しています。よって全てが常に
満足感を与えるお料理なのか、万人受けするお料理なのかと訊かれれば、分かりません。
しかし;
・調理・味付けの世界観がブレる事なく、一本筋が通っている事。
・その「らしさ」が上手くハマった時のお料理に出会うと、細かいマイナスなど吹っ飛んで
しまう。美味い「+α」がある事。
・毎回何かしら記憶に残るお料理に出会える事。
・CPの高さ。
ーーーーリピートするには充分過ぎる理由があります。
(そういや以前訪れた時、白子と里芋を、チーズ風味を少し効かせた春巻き風に仕立てた
お料理があった。あれも感動する美味さだったなぁ)
幸か不幸か、おかげでフレンチ等洋食系に関しては¥10,000/人を超えるお店へ行く機会が
グッと減ってしまいました。
(未知数のお店へ高いお金を出して冒険する気が出にくくなった(^_^;))
評点修正させてもらいました。
2020/06/07 更新
2019/09 訪問
安定の「ストイックな世界観と非凡なセンス」
久しぶりにディナーでお邪魔しました。
・(アミューズ)トウモロコシ(ゴールドラッシュ)の冷製スープ、パルマ産生ハム添え:
この時期のこちらの定番とも言えるトウモロコシのアイスクリームが中に添えられています。
生ハムの塩気と、優しく甘いトウモロコシのスープのバランスが良く、良いスターター。
・国産鱧と岐阜茄子のサラダ、ガスパチョソースにて:
相変わらず切れ味鋭いソースと食材の取り合わせが見事。ゆっくり噛んで味わうと、
それぞれの味わい、香り、ほのかな苦味が心地良く通り抜けていきます。
・宮城の鰹の瞬間スモーク、タルタルソース:
タルタルとはいっても、ピクルスらしき青味ある香りのソースの風味が先に立ちあがり、
飲み込む頃に鰹のコクのあるスモーク風味が後を追いかけてきます。
これ、本日最も感動したお料理でした。ちょっとあの味わいは類似する物の記憶無し。
・マナガツオのポワレ、大葉と小エビのガレット風乗せ:
このスタイルの魚料理も最近の定番ですが、エビのプリプリ感がより強調され、大葉との
組み合わせでこれだけで美味い。マナガツオに塩気はあまり付けられておらず、下にある
うっすら甘目の白ワインソースと細かく刻まれたバナナピーマンの絶妙なマリアージュが
効いており、上記を共に食せば何とも爽やかで品のある旨み。
・京都産鴨胸肉、イチジクソースにて:
相変わらず肉料理の火入れが素晴らしい。イチジクのソースは一見バルサミコか何か加えて
いるのかと思いきや、イチジクの甘味を凝縮した様な美味かつ清冽なソース。
絶妙火入れのお肉とイチジクの果肉と共に食せば、清々しい甘味と旨みで満たされます。
アミューズからメインに至るまで、そのストイックな味付けと食材の取り合わせ、味の落とし所
等々相変わらずのタケウチワールド全開でした。
一貫したセンス・世界観の中で「設定単価を超えるレベルのお料理」を提供し続けてくれて
います。
その「設定単価」上の理由もあるのかも知れませんが、個々のお料理のポーションは少な目
なので、あっさりとした味わいもあり人によっては少し物足りなさが出るかも知れません。
そこでデザートです。
デザートは4種類から一つ選ぶのですが、その際複数オーダーをお奨めします。
デザートの美味しさもかつての「ジェルブロワ」の頃から変わりませんので、複数種類の
デザートを食せば、お腹も気持ちも満足して食事を終えられます。
夜は¥5000/人のコースのみ。1ドリンクオーダー制の飲み物代がありますが、そこに
デザートを追加した所で消費税含めて¥6600/人前後です。
よって、個人的には上記の「デザート複数オーダー」はおススメです(笑)。
2019/09/15 更新
2017/08 訪問
設定単価を大きく凌ぐ出来栄えのお料理
レストラン・タケウチとして今のお店でスタートされてからは初めての訪問です。
以前より、フレンチ色がよりはっきりと打ち出されたお料理になっていると感じました。
夜はpre-fixのコース1種のみで、\5000+1ドリンクオーダーが基本の単価設定です。
フレンチレストランとしては安めというか、ほぼカジュアルレストランの値段設定ですね。
今回頂いたメニューについて簡単に述べます。
・岐阜県産トウモロコシの冷製スープ:
トウモロコシの持つ甘みを最大限に生かした逸品です。中に添えられたトウモロコシの
アイスクリームで、よりさっぱりと頂けるんですよねぇ。
・淡路産鱧と岐阜産茄子の冷製サラダ:
この設定単価でよく淡路産の鱧を出してくるなぁ、と感心しました。
胡瓜とセロリで作られたドレッシングが素晴らしい。
・北海道産ホタテとサマートリュフ、2色のズッキーニソース:
正直今まで洋食系のホタテ料理を美味しいと感じた事が余りなかったのですが、これは
非常に美味かった。火入れの妙と共に、トリュフの風味との相性も抜群。
ズッキーニのふくよかながらも品の良いソースがまた良いアクセントとなっています。
・手長海老と真鯛のポワレ:
手長海老と大葉をカリッとクリスピーな感じで仕上げた物が真鯛の上にサンドされて
います。ほんのり甘く仕上げられたクリームソースも主張し過ぎず、絶妙です。
陸ひじきのバターソテーが添えられていましたが、素朴ながらこれも美味い。
・鴨のソテー、万願寺唐辛子ソース添え:
以前のお店と同様、肉の火入れ加減が素晴らしい。基本のソースも絶妙の塩梅で、ソテー
されたシイタケ、鴨肉、そして万願寺唐辛子の苦味を活かしたソースが抜群のマリアージュ。
・デザート:私はフォンダンショコラ、妻は栗のブラマンジェっぽいもの。
これも自家製なんですよね。添えられているアイスクリームが美味しいんだよなぁ。
*尚、パンが出される時に一緒に添えられるリエット(今回は鴨と豚肉)も美味でした。
以前からの印象にあった「全体的に淡いながらも品の良い仕上がり」はそのままで、
その世界観はドレッシング・ソース他全てに貫かれています。野暮ったい味付けは皆無。
これ、この設定単価でのフレンチの料理では結構驚異的な事です。
やはり非凡なセンスと真摯な仕事が感じられます。
一応気になる点も挙げておきます。ナプキンがない・フォーク/ナイフ類は魚料理も肉料理も
使いまわしとなる・デザートの時に出る紅茶が美味しくない・デザートのラインナップが
昼も夜も変わらない、等々・・・
ただ、基本ご夫婦二人で切り盛りされている為、やれる事には限りがあるでしょう。
ましてやこの価格設定であれば、例えご夫婦二人で回していると言えどもどこかを削らざるを
得ない事もまた理解出来ます。
コース料理1種のみでやられているのも、なるべく仕事の質を落とさない為でしょう。
通常この価格設定で「フレンチのコース料理」を出すお店となると、大体お料理の出来栄えは
想像がつくし又その想像が外れる事もないんですが、このお店に関しては全く当てはまらず。
抜きん出た仕事をされていると思います。
このラインナップと品数、そして料理のレベルからすれば、岐阜市内でさえ¥7500/人位で
やっていても違和感ないと思います。
確かに料理のポーションだけで言えば、自分のような男性客にしてみれば若干物足りないと
感じる方もいるでしょう。が、それでも「又行ってみよう」と思わせるだけのお料理でした。
今後もこの驚異的なCPを維持していくのか、また違うやり方へ進むのか、それは分かりません。
ただ、良い腕をお持ちである事は間違いありませんので、今後も折を見て伺いたいと思います。
2017/08/07 更新
*情報:2022年5月1日からディナーの価格設定が変わっています。(ランチは未確認)
¥7150/人+1ドリンクが基本となります。
昨今の情勢(コロナ、ウクライナ侵攻etc)を考えると、価格改定は些か仕方のない事ではある
でしょう。ただ、その分食材の自由度や質も若干上がっている様にも思います。
自分自身、以前に「¥7500/人でも問題ないお料理」と書いていますので、この価格で変わらぬ
質のお料理を提供し続けてもらえれば問題無し、と感じています。
昨年の夏ぶりに訪れて頂いたお料理、相変わらずのタケウチワールドでございました。
・アピタイザー代わりのポタージュは、やはり見事な物。下卑た感じは微塵もなく、甘みと
クリーミーさが上品にまとまっています。
・続くツブ貝他シーフードのグリーンピースソースのサラダも、全てを口に含んだ時、繊細さと
上品極まりない旨味を与えてくれます。類似のお料理で、こちらの物を超える洋食にはまだ
出会えていません。
・ズワイガニのフランも、必要以上の重さはなく蟹の香りとクリーミーさのバランスがGOOD.
・春キャベツとイサキのソテーは、薄っすらとした味付けのキャベツのソースがやはり見事。
(ただイサキに少し火が入り過ぎていた様に感じ、旨味にも若干欠けました。魚は食材の質
そのもので7割以上が決まってしまうので、難しい部分はありますが)
・鴨肉の火入れも相変らず素晴らしい。最初玉葱ベースのソースと知って「鴨に合うのかいな」と
思いましたが、一口では玉葱と思えない位淡く優しいソース。これに鴨肉のジュースが
合わさった時のフルーティな甘みと旨味は特筆ものでした。
2人でデザートを3種を頼み、各々最初の1(ソフト)ドリンク+コーヒーで〆て¥8000/人
ちょい。
以前市内の某有名フレンチで¥13000/人のコースでガッカリした事もあり、断然こちらを
再訪します。
但し、以前にも少し書かせて頂いた通り、ある程度人を選ぶお料理ではあるかも知れません。
酒を飲みながらガヤガヤとつつく、という類の物では勿論なく、じっくりゆっくりと向き合う
お料理かと思います。
(そもそも、酔っぱらった状態でこちらのお料理の真価が判断出来るとも思えない)
一口目でガツンとしたインパクトはありませんが、二口、三口と食べ進めていくうちに
「ああ、これ以上は無いという位に余分と思われる塩味や油、エグみを削ぎ落しているんだなぁ」
と感じるお料理です(少なくとも私には)。
また、とにかく判り易いガツンとした旨味の料理を腹いっぱい食べたい、というのが優先事項の
方にもあまり向きません。
それでも「大味必淡」を体現しているお料理として、変わらぬ自分のお気に入りのお店です。
・尚、量的な部分やトータルでのサービス体制(これはシステム上仕方のない事ですが)で☆3.9
にはしていますが、お料理に関してはこれまでに☆4.0を余裕で超える物は頻発しています。