2回
2019/11 訪問
今夜もとんきは大盛況
秋の日は釣瓶落とし。
五時なのにあたりは真っ暗。
とんかつとんきの紺色の暖簾の向こうに暖色の灯りが硝子越しにちらちらする。
何とも懐かしいような暖かいような玄関口に吸い込まれる。
店内は既に満員。
カウンターの後ろの待ち合い椅子もいっぱいで、立ち待ちが5人程。
店全体を仕切る一番番頭とおぼしき初老の男性からオーダーを聴かれる。
ロースを。
客の特徴をメモとり、待ち合い席にバラバラに座っても決して順番は間違えない。
一度あのメモカードを見てみたいものだ。
入店から小一時間で着膳。
その間舞台となる厨房をずっと眺めている。
無駄な動きや無駄な会話は全くない。
相変わらす芸術的な調理場だ。
時間を忘れて舞台を楽しんだ後、キャベツととんかつにソースをかけて。
衣は薄め、じっくり時間をかけて揚げられたロースカツ。
変わらぬ旨さは言うまでもない。
ご飯も豚汁も、キャベツも漬物も、素晴らしい。
帰る頃には更に超満員。
今夜もとんきは大盛況だった。
2019/11/17 更新
2018/05 訪問
厨房は舞台、キャストはそれぞれの役割を完璧に演じ切る
店に入った瞬間からパフォーマンスは始まります。
人数を聞かれ、「ロースかヒレか串カツか」と白髪の初老の番頭さんに尋ねられます。
「ロース」と答え、着席。
番頭さんは紙に何かを書いています。
決して客扱いが丁寧なわけではありません。
ある意味、機械的です。
カウンター席の後ろにある壁際の長椅子には順番を無視して客がバラバラに座ります。
どんなに混んでいても決して順番を間違えることはありません。
紙には何を書いているのだろう?
似顔絵か?まさか、客の特徴を控えているのか?
このスタイルは30年以上前から変わりません。
来た順に席に案内してくれます。
今日はカウンターの一番入り口側。
この店の大きな特徴は広い調理場をカウンター席からすべて見せていること。
衣付けから揚げ、油切り、盛り付け、調理の過程を明るい照明のもと全てを客に晒すのです。
厨房もカウンターも檜作り。
毎日徹底的に清掃しなければ、調理場をそのまま客に見せることはできないでしょう。
舞台裏をあえて客の前に晒し、表舞台に仕立てているのです。
調理をする人々は全員無口、真剣そのもの。
何しろ客は待っている間、その一挙手一投足を見ているのですから。
今日は衣をつける工程の前に着席しました。
小麦粉→卵→小麦粉→卵→パン粉の順でつけて、油の入った大きな釜に投げ込む。
私の前の職人はこの作業を真剣にひたすらに続けていました。
調理場内の職人たちはそれぞれの持ち場の工程をひたすらこなしているのです。
スポーツ観戦に感動するのと同様、人が真剣に仕事をしている姿は素晴らしいものです。
12~13分で着膳。ロースかつにはソースがちょっとかかっています。
味には好み、賛否両論があるでしょう。
最近はやりの柔らかいSPF豚というわけではありません。
どちらかというと、肉は固め、ともすると衣と肉が分離してしまうことに違和感を感じる人もいるようです。
しかし、私はここのとんかつが大好きです。
とんかつの頂点だと思っています。
私にとってはずっと残しておきたい味、そして店の雰囲気なのです。
2019/07/13 更新
厨房は舞台、キャストはそれぞれの役割を完璧に演じる
2018/05/15 更新