タケマシュランさんのマイ★ベストレストラン 2016

タケマシュラン

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マイ★ベストレストラン

レビュアーの皆様一人ひとりが対象期間に訪れ心に残ったレストランを、
1位から10位までランキング付けした「マイ★ベストレストラン」を公開中!

マイ★ベストレストラン

1位

エクアトゥール (麻布十番、六本木、広尾 / イノベーティブ、フレンチ)

4回

  • 夜の点数: 4.5

    • [ 料理・味 -
    • | サービス -
    • | 雰囲気 -
    • | CP -
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 昼の点数: 4.5

    • [ 料理・味 -
    • | サービス -
    • | 雰囲気 -
    • | CP -
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    ¥40,000~¥49,999 ¥20,000~¥29,999

2022/12訪問 2022/12/23

議論の余地無し

元麻布の店舗を閉め(後進に譲る?詳しいことは知らん)、バンコクで再スタートを切ることが決まった「エクアトゥール(l'equateur)」。基本はフランス料理なのですが、中国料理の要素などを取り入れる意欲的な試みが多いお店でもあり、その武器のひとつにタイ料理や食材が加わるのは実に興味深いです。

毎度のことながら個室での利用かつワインは全て持ち込みであるため、この記事が誰かの参考になるかどうかは自信がありません。少なくとも費用対効果という概念とは距離を置いた食事会であることは確かです。

まずは本マグロ。白トリュフの香りが大変よろしい。核に白玉を用いており、にっちゃりした食感も楽しい。

海老芋のフリットに白子。ソースには西京味噌を起用しており、このワンシーンだけを切り取ると日本料理のようです。

フォアグラにオレキエッテ(耳たぶ型のパスタ)。オレキエッテのタレがバリ旨い。緻密にして濃厚。もうこれだけで腹を満たしてしまいたいほどの魅力がありました。

ローストビーフにツブ貝。ありそうでない斬新な組み合わせであり、互いの食感が互いの風味を刺激します。加えてネギのシャクシャク感に和のニュアンスを感じました。

カワハギとその肝のソース。コッテリとした味わいで日本酒が欲しくなる。やはりカワハギの主役とは身でなく肝なのだ、フォアグラと同じように。ウニもたっぷりとトッピングされており贅沢なひと品です。

手羽先には何と海老のすり身が詰まっています。もうそれだけでも美味しいのに、ソース・アメリケーヌのみっちりとした味覚に酔いしれる。うーん、こればっかり10本ぐらい食べたいなあ。

パンもいくつか頂いたのですが、何度食べても美味しいですね。素朴な味わいであり普通は普通なのですが、凄い普通の味がします。私の簡素で清潔な日常生活にしっくりくる。

コンソメを土台にフカヒレとカニを頂きます。これ以上無いというほど旨味が詰まっており、ワインが進む進む。底には牡蠣も忍んでおり、この時わたしは恋する乙女のような潤んだ瞳をしていたかもしれません。

メインはラカン産の鳩を選択。香ばしい皮目の食感にジューシーな脂、綺麗な身、正確にして巧妙なソース。これ以上は無いというクオリティの鳩料理です。プレゼンテーションが実に潔いのが良いですね。パフォーマンスも大事だが美味しいことには敵わないのだ。

〆のお食事にカペッリーニ。ぷるぷるムッチムチの黒アワビが導入されており、その肝のソースと共にリッチなヌードルです。今夜は色んな種類の肝を口にしたでござる。

デザートは栗をメインに添えたもの。栗そのものの味が濃く、モンブランとはまた違った魅力があるひと皿です。抹茶の心地よい苦味との組み合わせもいとをかし。
カリっとしたカヌレでフィニッシュ。ごちそうさまでした。

やはりと言うべきか、流石というべきか、どの料理も議論の余地無しに美味しかった。もちろん値は張りますがこれらの料理は当店のシェフにしか創ることのできないものであり、まさに唯一無二。今後、海外でスパルタンな環境に身を投じるのもANTIFRAGILEを見込んでのことであり、このセンスをもってすればどの舞台に立っても人気者間違いなしでしょう。幕は開けたばかりだ。

■写真付きのブログはコチラ→ https://www.takemachelin.com/2022/12/lequateur.html

元麻布の閑静な住宅街に佇むグルメビル。地階には費用対効果抜群のイタリアン「アルヴェアーレ(alveare)」、1階は3ツ星和食の「かんだ」、そして2階に地下に食べログフランス料理部門全国1位の「エクアトゥール(L'equateur)」。今回も個室での利用。ワインは全て持ち込み。

1皿目はシンプルなフラン(茶碗蒸し)にウニ、オクラ、じゅんさい。見た目も味覚も和食そのもの。

2皿目は明日葉のかき揚げ(?)に大量のトリュフを削ったもの。めちゃんこ食べづらく、また、トリュフをトッピングする必然性はあまり感じられず。

毎度毎度、パンは問答無用で美味しいですね。置かれるたびに秒で食べ切るほどのレベルの高さです。

牛肉のタルタル(?)に生海老のコラボ作品。エビのねっとりとした食感と甘味にタルタルの重厚な味覚が加わり悶絶の美味しさ。今風に言えばうますぎワロタwwwwwwwwです。1皿目と2皿目はまあ、普通に美味しいよね、程度のテンションだったのですが、この料理には参りました。2019年7月で最も旨い皿である。

たっぷりのアワビはフォアグラと西京味噌のソースで。アワビのグニグニとした食感に最強のソースがしっとりと忍び寄る。なお、フォアグラの風味はそれほど強くありませんでした。

根セロリのムースに大量の毛ガニ、甲殻類のジュレ。どう考えても美味しい組み合わせであり、甲殻類アレルギーの人間であれば尻尾を巻いて逃げ出す濃厚さです。あまりにハードパンチャーな味わいであるため、根セロリの印象は影を潜めていました。

スッポン炭火焼き。シェフが好きな食材なのでしょうか、当店におけるスッポン料理はスペシャリテの域に迫りつつあります。マッチョな歯ざわりで味わいも濃厚。まるで獣を食べているような威圧感。赤ワインが良く似合う。

お魚はハタ。酔いも手伝ってか、あまり記憶に残っていません。先のスッポンの味覚に圧倒されたきらいもあります。

お肉はハトをチョイス。旨い。こういったベーシックな料理が抜群に美味しいのが、当店の信頼感なのでしょう。内臓をじっくりと濃縮したサルミソースと赤ワインのマリアージュといったらない。

〆の炭水化物はフカヒレ麺。フカヒレをズルズルと啜ってしまいそうな大量のフカヒレが贅沢この上ありません。フカヒレへの調味や全体をまとめるスープも的確。やっぱセンスあるわあ。

デザートにはパートフィロ(パリパリの生地)にたっぷりのバニラアイス、トリュフをトッピング。ズッシリと重く安定感抜群の味わい。食べ切った!というフィニッシュ感を意識づける1皿でした。

それほど間を空けず訪れた弊害なのか、前回ほど絶頂に達したという感触はなく、全体として手堅く全てが旨かったという食後感。かき揚げとハタに抜け道を感じたので、ある意味で認識を新たにする良い機会だったのかもしれません。次回は夏季限定の中華料理屋「夏零」で、また違った世界観を楽しみたいと思います。

■写真付きのブログはコチラ→ https://www.takemachelin.com/2019/08/lequateur.html

食べログ4.79(2019年2月)でフランス料理部門全国1位。ミシュランの星は獲得しない無冠の帝王エクアトゥール。数年前はネットから予約できたものですが、最近は誰かに連れて来られないと入れないお店となってしまいました。そう、ミシュランという媒体は誰でも行ける店じゃないと評価の対象としないのです。

六本木、広尾、麻布十番のど真ん中。それぞれの駅から徒歩十数分を要する住宅街の秘密のビルの一室。下階には3ツ星和食の「かんだ」、地下には費用対効果抜群のイタリアン「アルヴェアーレ(alveare)」と、建物のオーナーは道楽者に違いない。この辺りの道路には常にショーファーがたむろっており、VIPに満ち満ちた地域なのでしょう。

今回は個室にて6名での饗宴。カゲロウ(系列のイタリアン)を含めエクアトゥールまわりに何度も訪れたことのあるベテラン揃い。ワインを持ち込み体調も万全。久しぶりに気合いの入った、緊張すら感じられるディナーの始まり始まり。

まずは食材のプレゼンテーション。キャビア・フォアグラ・オマールの三種の神器に、変わったところだとスッポン。往年のレアルマドリードのようなラインナップです。トリュフが割に雑な扱いなのがわろてまう。

トラフグの白子をペースト状(?)にしてから柔らかく固めた物質にタラバガニのソース。タラバガニの歯ごたえよし、ソースの旨味よし、白子の滑らかさよし。のっけから実にエクアトゥールらしい一皿。ブラインドで食べたとしても、小野喜之シェフの料理だと言えるかもしれない。

当店で食事をする特典として、パンが異常なまでに美味しいことがあげられます。ロブションとエクアトゥールは東京フランス料理パン旨い選手権のツートップ。ロブションは具材や風味がゴテゴテしたパンが多いですが、当店のそれは手堅くしみじみと旨い。

煮タコに海老芋に花わさび。何屋だよ、と思わず突っ込んでしまう一皿です。レスラーの親指ほどはありそうな大ぶりのタコに奥歯がスっと滑り込んでいく。柔らかくはあるものの弾力も感じられ、その食感を楽しんでいると爆発する旨味。どの日本料理屋の桜煮よりもレベルが高い。海老芋にもしっかりと出汁が沁み込んでおり(何屋だよ)、苦味のきいた花ワサビのパンチも見事です。

黒アワビにオマール海老にキャビア。ソースはアメリケーヌ(甲殻類の濃厚な出汁)とオランデージ(卵黄とバター)の2色刷り。フランス料理のエッセンスを全て詰め込んだ、ある種むちゃくちゃな料理です。ここまで高級食材を組み合わせられると「わかったわかったもういいよ」という気分になるものですが、当店の場合はパーフェクトな調和をみせてくれました。

並の料理人の場合、「あの高級食材とこの高級食材を組み合わせれば凄いんとちゃうか?映えるんとちゃうか?」という魂胆がミエミエですが、当店の場合は「実現すべき料理の素材を集めると、たまたま高級食材だった」という印象を受ける。理由があって、組み合わせる。しかも完璧に。

百合根のフラン(西洋茶碗蒸し)にフォアグラ、トリュフ。何でもかけりゃいいってもんじゃないですが、それでもうっかりアガってしまうのがトリュフという食材です。トリュフの享楽的な香りにフォアグラの艶っぽい味覚。百合根の優しく円やかな風味が全てを受け止めます。

ウニ、フキ、ハマグリ。ついついウニの眩さに目が行きがちですが、この皿のポイントは味付けでしょう。出汁というべきか魚介のエキスというべきか、何とも繊細で共感を誘う味わいのジュレが秀逸。表立って主張するわけではありませんが、揺るぎない味覚。木の根は目には見えませんが、木全体の命に関わる重要な部分。そんな料理でした。

私の記憶が確かならば当店はフランス料理屋というジャンルに属するはずなのですが、つくねです。鶏ではなく、スッポン。奥歯の奥でギリっと鳴るような噛み応え。猛々しく頑強な味わい。野性味すら感じられる強烈な味覚。スッポンで鳴らした京都たん熊なんかよりもダンチに旨い。

甘鯛。タラの芽やウドと共に、和食のレトロフューチャーとも言うべき1皿です。ベースとなる味付けは白味噌であり、何とも慎み深い味わい。

メインはマガモをチョイス。 獣性的な迫力に満ちており、百万馬力の味わいです。一般的にコース料理のメインディッシュはどこも似たような味わいで惰性で食べることが多いですが、当店においては石が流れて木の葉が沈む。真打あっての前座だぞ、と、存在感に溢れた肉料理でした。

〆の麺があると聞いて嬌声があがる。なんとも自由奔放なコースの組み立て。ちなみに当店は夏季限定で「夏零」という中華料理屋に変身しており、そのスピンオフ作品とも言うべき1皿です。妙にむっちりと歯ごたえのある麺にミンチ肉と白子のソース。こういう料理を気負わずサラっと作れてしまうセンスに嫉妬する。人はそれを才能と呼ぶ。

デザートはティラミス。それでも一筋縄でいくはずもなく、苺とトリュフが多用されています。またトリュフか、いつも柳の下に泥鰌は居るわけじゃないぞ、と疑いの目で口に運ぶともうダメ。全然美味しい。この絶妙な風味の調合に再現性があるだなんて信じられない。人はそれを天才と呼ぶ。

コーヒーとカヌレで〆。ごちそうさまでした。一般的には思い出と戦っても勝てないことが多く、私が3年前に訪れた際の感動も神格化されているだけかと思いきや、その時の経験を遥かに凌駕する完成度であり、平たく言うとめちゃんこ旨かったです。

私は基本的に前衛的な料理は好まないのですが当店は別格。意欲的な挑戦はさておき、純粋に美味しい。芸術性を追求する料理店は純文学的で大して美味しくないことが多いですが、当店は直木賞。エンターテインメント性に溢れつつ、ズバリ美味しい。フランス料理というよりもエクアトゥール料理。究極のうまいもの屋。次元が違う。

■写真付きのブログはコチラ→ https://www.takemachelin.com/2019/03/lequateur.html

L'equateur。食べログ4.63で全国トップ50入り。エクアトゥールとはゼロ地点(赤道)という意味らしく、なんとも意味深な店名です。

特筆すべきは予約の取り辛さ。マンションの1室にある小さなお店で、シェフとマダムのふたりで運営しているためどうしても客数が限られるのです。私はお邪魔する数ヶ月前になんとか予約を入れることができました。

予約システムも面白い。webからの事前決済制度で、キャンセルなどは一切不可。行けなくなったのであれば、知人にその権利を譲るという仕組みです。

この考え方には大賛成。世の中には飲食店と歯医者と美容院の予約を甘く見ている輩が多すぎる。窃盗よりもタチが悪い。刑事罰にしても良いぐらいです。

海外のopentableは事前にクレジットカードを登録しておき、ドタキャン客からも問答無用で代金を引き落とすのが普通なので、是非日本でもそのようなルールを導入して欲しいところ。

乾杯はドラピエ。ミレジム(優れた収穫年にのみ限定で生産される)で行きます最高か。

泡は繊細で控えめ。複雑性を帯びた花やジャムの香り。ボリューム感とコクを楽しむシャンパーニュ。

キンカンをくり抜き、フォアグラのムースを詰めてキャラメリゼしたもの。アミューズでこの手の込みよう。フォアグラのコクとキャラメルの香ばしさが先のシャンパーニュと一致団結。

香箱ガニにコンソメのジュレ、甲殻類のソース。まず、ソースが旨い。コンソメが旨い。こういうベーシックな部分に心から信頼を寄せることができる店は中々無い。繊細かつ大胆。当店のシェフの実力は本物です。賭けてもいい。

ナッツをたっぷりと湛えたパン。ううむ、ここ数年で食べたパンで最も美味しいです。こんなに美味しいパンはロブション以来か。

サーロインに牡蠣、キャビアに自家製のメンマ。メンマ?と思わず聞き返してしまいましたが、間違いなくメンマでした。

この豪華食材のオンパレードはトゥ・ラ・ジョアを彷彿とさせますが、完成度は全く別物。調和しているんです、完璧に。メンマのシャキシャキとした歯ごたえも堪らない。これは紛れも無くセンスであり、努力してどうにかなる料理じゃないと得心しました。

オーセイ・デュレスの78。私の姉の生まれ年です。さすがに枯れた色かつマイルドなタンニン。泡の次がいきなりの古酒で面食らいましたが、これがまた先の皿にぴったりなんだな。

こちらのパンは標準的。最初のパンが美味し過ぎたのかもしれません。

白トリュフにフカヒレ、オマール海老。思わず口笛を吹きたくなる組み合わせです。たきやを想起させる贅沢さ。白トリュフの香りやエキスにくびったけ。フカヒレに相好を崩し、スケールの大きいオマールに全面幸福。

96。すごいなあこんなに古酒ばっかり。円やかな樽を感じ、優しくバターやハチミツが香ります。白トリュフの香りを柔らかく受け止め口の中で新しいソースを作り出す。

エビのフリットにフグの白子、アオサノリのソースに柚子でアクセントを乗せています。サクサクと軽いエビが心地よい。フグの白子はP系で官能的。見栄えもグロかわいくうっとり魅入ってしまう。アオサのソースもお見事。これは日本人にしか作れない料理ですね。控えめに言って傑作です。

シャキシャキとして直線的なシャブリ。程よく華やかで率直。酸もしっかりです。

ブイヤベースのエクアトゥール風?キンキンに冷えたカッペリーニにカンパチ、タコのラグー。これもすごくいい。タコのラグーの旨味の強さをカンパチの歯ごたえが包み込む。髪の毛のように細い1本1本の麺にソースが絡みつき、ここまで上質なパスタはイタリア料理専門店でも中々ありません。

キンキンに冷えた微発泡。食べる前に一口飲んだ際は冷やしすぎだと思いましたが、カッペリーニと合わせて食べればその冷たさに絶妙でした。全てが完璧に設計されている。恐れ入りました。

メインは鳩。余計なガルニチュール(付け合わせ)などはなく肉1本で勝負と潔い。シェフの食材に対する偏執的なまでの愛情を感じます。

筋肉質で食べ応えのある鳩。サルミソース(内臓のソース)も伝統的で、こういうことが要するにフランス料理だ、と主張する料理でした。

合わせるワインはカロンセギュールと気前が良い。チョコレートのような濃厚な風味が迫り来る。サルミソースと一緒に飲み込みバッチグー。それにしても、このワインを飲むたびに中村マリアとのピルエットでのトラブルを思い出す。

連れのメインは鹿。こちらも鳩と同じく割り切ったプレゼンテーションです。

ややベリーの香りがするピンク色のパン。席数を可能な限り抑えているのにパンのレパートリーが幅広い。大変な企業努力だと思います。

デザートはフォンダンマロンにラム酒とラムレーズンのアイスクリーム。ナイフを入れると流れ出る濃厚なクリのソース。アイスクリームとも見事なハーモニー。最後の最後まで完璧でした。

コーヒーも完璧。カヌレがカリカリとクランチーな食感で斬新でした。

この記事には何度『完璧』という単語を用いたことでしょう。それほどまでに無謬性の高い料理たちであり、どの皿も完璧に美味しかった。あ、また使っちゃった、『完璧』。

ベクトルとしてはナリサワやフロリレージュ、レフェルヴェソンスのような前衛的なフレンチでしょうか。しかし時には龍吟的でありたきや的でもある。正統的なフランス料理に見え隠れする和のエスプリ。天才によって創られる唯一無二の饗宴です。

マダムの付かず離れずのサービスもすごく好き。余計なおしゃべりなどせず、良い意味で客を放っておいてくれます。かといってぶっきらぼうというわけでなく、用事が済めば笑顔だけ残して去っていき、必要な時にはそこにいるという感覚。居心地が凄く良かった。

年の瀬が迫ったところで今年のベストレストランに巡り遭う事ができました。今年もシア充な一年でした。

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2位

フロリレージュ (外苑前、表参道、国立競技場 / フレンチ、イノベーティブ)

1回

  • 夜の点数: 4.5

    • [ 料理・味 3.5
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 4.5
    • | CP 5.0
    • | 酒・ドリンク 3.5 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥20,000~¥29,999 -

2016/06訪問 2023/01/24

間違いなく世界を狙える

ミシュラン1ツ星Florilege。カンテサンスならびにル・ブルギニオン出身で、いずれのお店も私の大好物なのですが、なぜか当店に前回お邪魔した際は全然ピンと来ず、首を傾げながら退店することになったのです。

それでも世間の評判は上々であり、当店の川手シェフはカンテサンス出身者としては白眉な存在というのがグルメ仲間の定説であったので、単に私の趣味志向に合致していないだけなのかなあと無理矢理自分を納得していました。

そんな折、「フロリレージュが移転して無茶苦茶カッコ良くなった。東京のレストランを語る上で行かないのはモグリ」と通報。あまり気が進まなかったのですが、一流のミーハー魂が私の重い腰を押し上げ、なんとか座席を確保しました。

ウァアオ!かっこええ!81の劇場型コの字テーブルとは一味も二味も異なる存在感。コロシアムのように調理場が一段低くなっており、まるで自分が料理の鉄人の審査員になったような錯覚にとらわれます。

さらに圧倒的なこの空間を創り上げているのはゲストの面々。これでもかというほど食にうるさそうな方ばかり。業界人とキュルルン系女子のような不健全なカップルは一組もおらず、お前ら絶対仕事で来てるだろという鋭いプロの眼光が居並びます。ちょっとした前衛的な皿などビクともしないぞと、気難しい表情で料理人たちの手元を観察する。このゲストたちに見下ろされながら丸裸で調理するのは胃が痛くなりそう。若い料理人たちは当店で修行すれば飛躍的に実力が伸びることでしょう。

コースは11皿のおまかせのみ。ワインはペアリングでお願いします。まずはシャンパーニュ。シャルドネ特有の爽やかな苦味が食欲を刺激します。ちなみに当店のシャンパーニュはペアリングに含まれており、シャンパーニュだけは別会計というお店が多い中、これは嬉しい仕組みですね。

「投影」がテーマの一口でスタート。フキノトウとフロマージュブラン(フレッシュチーズ)をエアリーに仕上げたアミューズ。良い苦味です。泡にもピッタリ。ゲストの期待感を大いに煽る素晴らしき最初の第一歩。

この皿のテーマは「懐かしみ」。新鮮で旨味の強いイワシを片面だけ炙り、柔和な新タマネギのアイスクリームの上に寝かせます。ヘシコを練りこんだ自家製パスタの変化球も圧巻。和のテイストがシェフの独自性を際立たせ、私の中で2016年上半期最もレベルの高い料理です。あまりの美味しさに、うっかり天に召されそうになりました。しかしテーマの意味は全く不明。この皿が懐かしいだなんて、どんな人生を歩んで来たのか。

合わせるワインはシュナンブラン。ノンフィルターで濁っています。私は有機とかビオとか無濾過とかを元々好まないので残念賞。

真っ黒で軽い器を手渡される。中の布を取り出すと、酒粕の蒸しパンが登場。これは全然美味しくなかった。モソモソした食感で深みがない。それほど酒粕も感じません。これなら普通のパンでいいや。

テーマは「コンフィ」。突然そのまんまです。スッポンの卵と出汁のフラン(茶碗蒸し)の脇にスッポンのエンペラを配置し、大ぶりで肉厚なスッポンの身を中央に鎮座させる。仕上げにワラビ。

フランは期待通りの味わいで文句なし。エンペラのゼラチン質は意図が私には理解できませんでしたが、その一方でスッポンのコンフィの味わいの素晴らしさといったらない。食べ応えのある歯ざわりにジューシーなエキス。シェフは和食の料理人としても大成したことであろう。

おや、アモンティリャードだ。これはもしかして、アピシウスのウミガメのスープとアモンティリャードのマリアージュに対するオマージュでしょうか?私の考えすぎかもしれませんが、1人で勝手に嬉しくなってしまいました。

「コントラスト」。川手シェフの代名詞、フォアグラです。しかし私は彼のフォアグラを甘く甘く食べさせる芸風があまり好きではなく、やや身構えてから臨みます。

食べて驚き、何とも爽やか!苦味のあるムース(菜の花?)とサワークリームを極上のフォアグラと共に口に運ぶ爽快感。数々の山菜が次々に大地を感じさせてくれ、フォアグラのクドさを一掃する。焼肉の脂をアサヒスーパードライで洗い流す感覚に似ています。コントラスト。ぴったりのテーマですね。

酒は仙禽を。品の良い爽やかなフルーツ香とちょっぴりの辛口、少しの甘味。先のフォアグラに対しては控えめに控えめに寄り添う。料理にピッタリというよりも、料理を引き立たせるために尽力する、そんな合わせ方でした。

「サスティナビリティー」。子供を産みまくった十数歳のおばあさん牛のカルパッチョです。赴き深い熟成感。フォンを主体にした熱々のスープを流し込み、高尚なしゃぶしゃぶのようにして頂きます。リンゴのソルベも意外性があっていい。

スペインのグルナッシュ×シラー。薬草というか何というか、独特のスパイシーな酒躯体が妙齢の雌牛にぴったりでした。

「ヘテロ」。牡蠣のかき揚げ(シャレ?)です。テーマは全くの意味不明ですが、んなこたぁどうでもいい、旨さが過ぎる。上質な牡蠣を温度を高めてギュっと凝縮し、海の豊かな風味を約束します。山場は衣のおかひじき。独特の風味が牡蠣の旨味と渾然一体となり、猛き味わいへと移り変わる。レモンのメレンゲで一休みする工夫も素敵だなあ。

合わせる飲み物はカクテル。ビールを液体窒素で泡のまま凝固させたアイスに甘夏とアブサンを流し込む。夏ですねえ。マリアージュとか抜きにしてこれ単品で大好きです。ジョッキで飲みたい。

オマケで牡蠣のエキスが一口分。これにもまた悶絶。牡蠣の美点が濃縮されており、牡蠣よりも牡蠣の味がしました。

「和の風味」。テーマが唐突に常人の作文のようになりました。ウロコを立たせた甘鯛に山菜のソース、魚の出汁。これも文句なしに美味しいのですが、独創的かというとそうではなく、どこかで食べたことがある味わいでした。

ところで、他のテーブルはエビを躍動的に盛り付けた皿を楽しんでおり、嫉妬心に駆られて思わずスタッフに、どうして甘鯛とエビの人がいるの?と尋ねてしまう。「何度かご来店されて、料理が重複しないように」との説明でした。ぐぬぬ、これはまた来ないと。

仕上げにバターで炒めたカブを追加します。このカブはバターの長所を身に纏っており、ガルニチュールとして良い仕立て。こういう何でもない脇役が美味しいのって、本当に実力がある証拠ですよね。

正統派のシャルドネ。適度な樽のバター香とカブが絶妙の取り合わせ。一方で、甘鯛の奥ゆかしい味わいはマスキングされてしまい、結果、別々に食べることにしました。

「分かち合う」。巨大なシャモを他のお客さんと分け合って食べましょうというコンセプト。途端にテーマが解かりやすくなってきました。

繰り返しになりますが臨場感が抜群です。いずれは世界のスターシェフにまで上り詰めるであろう川手シェフが目の前で縦横無尽に立ち回る。彼を支えるスタッフたちの眼差しも真剣そのもの。仕事に対する気迫が手に取るように伝わってきます。良い職場だなあ。Meadowoodのダレたキッチンとは大違いだ。

BGMは脂の爆ぜる音や皿の重なり合う音。旨いもの好きとしては最高のエンターテインメントです。それにしても、この全てをディスクローズする姿勢には全く恐れ入る。ごくたまに失敗シーンも見えちゃったりするのですが、人間味が溢れて思わず笑みがこぼれます。

先ほどの肉塊を切ってソースをかけるだけと思いきや、モチ米のおこげで食感に動きを与えます。この米使いは西欧人には中々できないでしょう。「フランス人、酢飯の作り方がわからないらしくて、必死に酢の分量を計って一生懸命炊いてるの。最後にふりかけて混ぜているだけなのに(笑)」という、ある料理人から聞いたコロンブスの卵な逸話を思い出しました。

肉質はどこまでも柔らかく純真無垢。おこげのガリっとした食感と、奥歯の窪みに留まって旨味を保持する設計が見事でした。

王道にピノ。クリアなシャモの味わいと醤油(?)風味のおこげにベストマッチ。欲を言えば、もっと量を飲みたかった。ペアリングのお店って、飲むペースを速くすると、お店側の好意で注ぎ足ししてくれることが多いのですが、当店でそのサービスはありませんでした。残念。

デセール一皿目は「テクスチャー」。温かいキャラメルの皮の内側には冷えたパッションフルーツのムース。ふたつの温度帯を使い分けることが好きですね当店は。キャラメルの甘さは控えめで丁度良し。パッションフルーツのタネのバリバリ感がアクセントとなり美味しかった。

合わせるワインはモスカテル。ワインはブドウから造られるのにブドウの味がしない不思議な飲み物ですが、ことモスカテルに限ってはブドウの味が前面に現れています。おまけに先のキャラメル&パッションフルーツとも見事な調和。本日のベストカップル賞。

「お似合い」。落花生のブランマンジェ。ピーナッツの甘さを上手にプレゼンテーションできた逸品。量もたっぷりで大満足。

卵黄を用いたソース(?)が中央に隠されているのですが、目玉焼きのようなヴィジュアルに心が和みました。

〆のお酒はサヴァニャン。エレガントかつリッチ。当店のペアリングに冒険心はあまりなく、教科書のような組み合わせの提案が多いです。私はワインについて極めて保守的なので、このような方針は非常に好ましい。

「旬」。ヨモギのチップスが立体的に構築され、ヨモギのペーストとアイス(失念)を乗せながら頂きます。ああ、この饗宴も終わりに近づいているのかと、寂しい気持ちがこみ上げる。

温かい飲み物に、私は緑茶、連れはハーブティー。

お茶菓子は甘いイチゴをゼリーでコーティングしたもの。色とりどりのミニャルディーズも嬉しいですが、このような一点突破主義もまたおかし。

お茶は奈良県の大変に立派なものだそう。まずは低温で抽出して味見し、その後高温でたっぷり頂きます。レフェルヴェソンスの抹茶もそうですが、世界を意識しているお店は随所に和のエスプリをきかせてくるのが楽しいですね。美味しいコーヒーはどこでも飲めますが、美味しいお茶を飲む機会は中々無いので大満足。

久々に圧倒的な迫力を感じたディナーでした。感動です。コースに波があるわけではなく、常にフォルテッシモで駆け抜ける感覚。皿出しのテンポも良くリズム感があり、東京、いや世界でもトップクラスのレストランの仲間入りです。

移転前にとは全く印象の異なる完全に別のお店です。恐らくシェフは元々このような突き抜けた感性を持っていたのだけれど、狭く導線の悪いハコに押しつぶされていたのではなかろうかと邪推してしまう(そういう意味でアビスの行く末が少しだけ気がかり)。

これは間違いなく世界を狙えますね。近い将来ミシュラン2~3ツ星は当選確実、The World's 50 Best Restaurantsの背中はもうすぐそこ。それでいてひとり30,000円に収まりナリサワの半額以下とは奇跡としか言いようがない。今のままでも大満足なのですが、是非金額を倍にして、食材費など気にかけることなく才能を余すことなく発揮して欲しいところです。

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3位

キャーヴ ドゥ ギャマン エ ハナレ (白金高輪、白金台、広尾 / フレンチ、鉄板焼き、バー)

1回

  • 夜の点数: 4.5

    • [ 料理・味 -
    • | サービス -
    • | 雰囲気 -
    • | CP -
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    ¥15,000~¥19,999 -

2016/03訪問 2019/08/30

世界を狙える日仏料理

オーギャマン・ド・トキオの姉妹店として地階にオープンしたのですが、お姉ちゃんが恵比寿に引っ越したので、本格的な「ハナレ」となってしまった妹。

「フレンチをベースに和と伊の要素を取り入れた…」という触れ込みであり、こういうお店は創作に走って物珍しいままに一生を終えることが多いので、ちょっくり斜に構えながらの入店です。

ビールを飲みながら連れを待つ。この店の風格に比して800円は安い。電波が弱く快適にスマホを選べないのが難点ですが、和食よろしくカウンター越しにお店の方が色々と話しかけてくれてくれるので退屈しません。

我々が陣取った和食ゾーン。どっからどう見ても和です。ちなみに壁一枚隔てて裏側には伊を取り扱うためか、あっという間に洋風。セクシーな空間でバーとしての使い方もありかもしれません。

連れが到着したのでシャンパーニュで乾杯。ピノ70%のシャルドネ30%。酸がキリっとしたリンゴ味で炭酸が強め。食前酒として適任であり、また、奇しくも1皿目とのマリアージュが完璧でした。

料理はアラカルトとお任せコースのどちらでもOKとのことだったのですが、単品メニューが和で十数種、イタリアンで十数種と盛り沢山。一見で自分好みのものを選び抜く自信が全く無く、「お任せであれば今夜の美味しいところを少しづつお出ししますよ」とのことだったので、然るべくお任せに流れます。

ギャマングループのスペシャリテ、トウモロコシのムースに生ウニ。穀物がどこまでも滑らかで甘く、海の味は新鮮で濃厚。安心できる美味しさです。ただし近年類似品が出回っているので、かつてほどの輝きは失われてしまったかもしれません。

何の気なしに手にとって口に放り込んだパンに驚愕。まあ普通に美味しいパンだよね、とモグモグしていると、喉の奥から立ち上る鰹の香り。何なんだこれは。ワインにおいてレトロネーザル(口中香)は重要なファクターですが、パンにおいて意識するのは初めてです。姿勢を正し分析的に取り組むと、なるほど含水量が高くむっちりとして歯ざわりも素晴らしい。この時点で、今夜の勝利を確信しました。

左はヒラメの昆布〆に白アスパラガス。ヒラメは昆布の〆が効き過ぎて個人的には好きじゃありません。一方で白アスパラガスの活力が素晴らしく、シャキシャキとした食感と相俟って爽快でした。

右は桜マスに木の芽の味噌ソース。おおー、これは美味しいぞ。桜マス自体の味が濃く焼き目の香ばしさも食欲を刺激する。それだけで充分なのに、鮮やかな緑の木の芽ソースがマスの主張に負けじと力強く主題を包み込みます。発想が足し算、完全にフランス料理です。After Sevenのシェフがこれを食べれば出会って4秒で弟子入りであろう。

蒼いそら豆は結晶の大きいコクのある塩で頂きます。

マグロとセリのサラダにホタテの炙りをトッピング。そう、この裏側にマグロちゃんがいるのです。セリは野生のものであり、大地を強く感じる味わい。肉厚なホタテの深奥部はレアであり、外側に向かうに従ってグラデーションを楽しむことができる逸品でした。

タイの白子にタケノコにブイヤベースを流し込む。能書き不要。悶絶するほど美味。料理の水族館を煮詰めたような液体に白子の官能的な舌触りがベストマッチ。タケノコにはエグ味などは一切無く、軽やかな歯ごたえと共に季節を丸かじり。連れと顔を見あわせ頷きあう、この店は凄いぞと。

活き活きとしたホタルイカにアンチョビのソース。ホタルイカの苦味にアンチョビの塩気が固形の魚醤のように添加されビール持ってこい!スダチの透明感も日本人としてホッとする爽やかさ。

グリーンピースのすりながしで心を落ち着けます。こういう脇役までいちいち美味しいのだ。

ここだったっけなあ、ズワイガニのライスコロッケにパクチートマトソースが出たのです。先日のリストランテ・ヒロにて、オマール海老のコロッケにアイオリソースとアメリケーヌソース、というものを頂き大変美味しかったのですが、アメリケーヌソースのリゾットを混ぜ込んでライスコロッケ風にするもの良いかも、とも感じており、まさにそのイメージ通りの料理、いや、パクチーソースはちょっと斜め上、いずれにせよ大興奮の一皿が出てきたのです。ボルテージがあげぽよのあまり写真を撮り忘れてしまいました。

サヨリと春野菜のカラスミペペロンチーノ。カラスミがふんだんに用いられており酒の進む炭水化物です。春野菜やサヨリもたっぷりで、パスタというよりは、ひとつの料理。その因子のひとつにパスタがあるといった頃合。食べ応えがあり満足。皿に残ったカラスミを舐めまわしたかった。

お肉の前にカリンのグラニテで口直し。カリンはワインの香りを説明する際によく使われる果物なのですが、まさにそのワインの中にあるカリンの香りでした。

メインはトモサンカクだと伺っていたので、濃い目の赤を選びました。メルロ主体で黒果実の香りが支配的。ちょっとコーヒーっぽくもあります。ACボルドーとは思えぬ濃厚な複雑性がたっぷり。非常にリーズナブルなワインです。

目前で丹念に焼かれた肉塊をスライス。ソースは大根おろしを硬く絞り、卵黄を混ぜ込んで白ゴマを散らしたもの。ソースが天晴れ。卵黄の艶っぽい味わいに大根の清らかな方向性が見事に調和。肉自体にはやや脂が残り、ソースの味わいを邪魔します、ってソースが主役じゃないや肉が主役だったわ。

調理過程においては炭火の高さが2段階になっていて火力を適宜使い分けている模様。発想がフレンチのサラマンダー的で、焼きあがるまでのプロセスが興味深かった。シェフズテーブルの醍醐味ですな。

コースは一通り食べ終えたのですが、連れが「あたし、まだ、いけるわ」と頼もしい一言。それならばとアラカルトメニューに目を遣る。「梅ラーメン」「わさびリゾット」「牛ホホカレーライス」「山椒ミートソース」など魅力的な品々が名を連ねる中、「筍の炊き込みご飯」を選択。

ストウブで丹念に炊かれたごはん。イベリコのチョリソで出汁をとり、旨味を充分に膨らませた逸品。

ジェノヴェーゼソースをアクセントとして米粒に1滴づつ伸ばしていくと、また賑やかな味わいに。

お椀として梅ラーメンのスープをのばしたものをお出し頂きました。カツオ主体の塩味充分。先のごはんを流し込み至福のひと時。

食べ切れなかったごはんはおにぎりにしてお持ち帰り。連れの翌日のランチがコンビニからずいぶんと出世したものである。

デザートも決め切れなかったので、気になった所を全て盛り合わせにして頂きました。左は羽二重餅の再構築。見た目は何だかわかりませんが、食べるときちんと羽二重餅しています。中央はあずきクリームのミルフィーユに黒ゴマアイス。あずきクリームの上品な甘さと生地のサクサク感が絶妙。右はチーズケーキ。こちらは中々に正統的で安定した美味しさです。

エスプレッソをダブルで頂き、満腹でごちそうさまでした!

素晴らしい料理でした。フュージョンって面白くはあるものの美味しくはないのがこの業界の常ですが、当店は1皿1皿が全てが極上品です。これはすごい。しかも、なんか色々組み合わせちゃったら旨かった系ではなく、何故これとこれを組み合わせるのかを徹底的に考え抜いた上で料理を設計するスタイル。偉大な料理を理解して自身の哲学に基づき分解整理し、旬の素材にプロジェクションマッピングする。シェフは塩顔男子で飄々としていますが、相当な勉強家に見えました。

食後はシェフと我々でのワインならびにレストラン談義に華が咲く。シェフは昔からの友人のように我々の懐に飛び込んできてくれ、パリで働いていた頃の話や料理に対する取り組み姿勢などをお話してくださり、ううむ、彼はお世辞抜きで世界を狙える料理人ではなかろうか。

世界基準で見れば、当店の料理は楽勝で3ツ星クラスなんですよね。というか、私の経験では海外のフュージョンな有名店、例えばアルサックやムガリッツ、アケラレなどと比べても当店は頭ひとつ抜けています。

話はややこしくなるのですが、フュージョンを東京基準で見ると龍吟やナリサワなどライバルは増えてきます。東京のレストランのレベルは高すぎるので(だってナリサワが2ツ星なんですよ!)、いっそのこと海外でポーンと独立したほうが色々と近道だったりして。仕入れの問題をクリアして海外で同じものを出すことができれば、あっという間に料理界を席巻できると思うのだけれども。

ちなみに今夜はたまたまクスダがグラスで空いていたんですって。ワインバーでもなくこのラインナップはすげえなあ。「持ち込みも大歓迎ですよ」と懐が深い。コルケージ(抜栓料)は3,000円とのことだったので、私の人生初のワイン持込は当店になるかもしれません。

と、料理やサービスについては文句の欠片も無いのですが、全体的にちょっと高い。今日は初見なのでシェフのフルパワーを楽しむことに重きを置き、ワインも他意なくボトルでポコンと飲んだのですが、次回は食べたい好きな食材をピンポイントで狙っていこうと思います。ワインもグラスで色々楽しもう。しかも深夜に。ラストオーダーは26時と夜行性には頼もしいお店。

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4位

東麻布 天本 (赤羽橋、神谷町、麻布十番 / 寿司)

1回

  • 夜の点数: 4.5

    • [ 料理・味 -
    • | サービス -
    • | 雰囲気 -
    • | CP -
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    ¥40,000~¥49,999 -

2016/11訪問 2019/08/30

欅坂46のような鮨

2016年最もグルメ業界を沸かせた鮨屋と言えばココ「東麻布天本」。

若き大将は青山「海味」の二番手を務め、独立前に滋賀「しのはら」、京都「祇園さヽ木」など日本を代表する和食店で修行したのち、満を持して独立。開店前から数ヶ月先まで予約が埋まり、現在は1年先まで埋まっているという、世界で最も予約が取れない鮨屋です。

まずはビールで乾杯。8席の小さなお店、かつ、基本的に関係者ばかりなので、自然とワイワイガヤガヤと和やかな雰囲気となり、初対面でも友達です。もずく。繊維が細く酢が強めなのが特徴的でした。

山口は萩のばい貝。コチラは海鮮居酒屋で出るような、ごく普通のお通しといったところ。

白子とアサリの茶碗蒸し。白子部分とアサリ出汁部分の2温度帯に分かれており、白子はヒンヤリと滑らかで、酸を感じるジュレが味覚に彩りを与えます。

一方で、アサリ出汁部分は標準的。いずれにせよ、並の鮨屋であれば具材として白子を用いるところを、白子と生地を分けるあたり、これまでの経験に対する矜持を感じました。長崎の「迷い鰹」。「迷い鰹」とは太平洋に抜けずに迷って日本海方面まで突き進んでしまった、ちょっとおバカなレアなカツオです。

しかし味は極上。客全員が即座に無条件降伏を受け入れました。こんな旨いカツオがあるか?これまでに食べたカツオの中で一番は勿論、マグロを含めてもトップクラスの味わいです。天上の美味に一同沈黙に次ぐ沈黙。食べるスティーブン・セガールである。さてさてビールはここまで。鮨と言えば日本酒です。すっきりとした口あたりに爽やかの喉越し。バランスの良い酒です。

釧路は仙鳳趾(せんぽうし)の生牡蠣。つるんとした肌触りにミルキーで優しい海の味。渡辺美優紀を牡蠣にするとこのようになるのではあるまいか。プレゼンテーションも素敵。記念切手にしてコレクションしたいほど美しい。

シャコ塩辛。面白い。シャコをこのように食べるのは初めてです。兎にも角にも酒が進む。華やかな吟醸香。品の良い日本酒でした。

噴火湾あん肝。こちらも興味深い逸品です。プリンやスフレのような滑らかさ。あん肝特有のクドさやコッテリ感は一切無く、ブラインドで食べればそれこそ特殊な味付けをした茶碗蒸しと答えてしまうかもしれません。

豊後水道サバ。一本釣りして今朝シメたばかりのもの。これは中くらい。美味しいですが、劇的な何かがあるというわけではありません。

増毛のボタンエビ。背中に乗っタマゴはエメラルド。再び一同絶句。スティーブン・セガールの再襲来である。官能的なエビの甘味。とろける舌触り。卵に対する罪悪感。美味しいとしか感じることができませんでした。

パワフルなお酒。ツマミの濃さに負けない存在感。厚みがあって芯が太い。山田錦らしい1杯です。

サワラの幽庵焼きを丼で。ううむ、コチラも見事な出来栄えです。やはりきちんとしたお店で普通の料理を食べるとお店の価値が直線的に伝わってくる。

玄界灘のタイ。昨日しめたチョイ熟成モノ。ムツムツという舌に貼り付く熟成感。適度な弾力。繊細なタイミングの味わいでした。

こちらも骨格がしっかりした1杯。若干の苦味が感じられますが、ある意味料理とあわせるにはちょうど良い特徴かもしれません。

残念ながらガリは普通のガリでした。個人的には丸々漬け込んで、その場で厚めにスライスしてもらうガリがタイプなのですが、まあ好みは人それぞれ。

神戸のポートアイランドあたりで獲れたアジ。それなりに美味しいですが、これまでのややこしいツマミやにぎりの快刀乱麻を断つというほどの存在感は見えませんでした。

スミイカ。厚みがあってグッドです。ああ、旨いイカってこういうのなんだな、と、しみじみ感じ入らせてくれる一口。

ヒラマサも適度な熟成感が素晴らしい。昨今は肉でも魚でも熟成ブームで飽き飽きしてきましたが、その流れに流されることなく、個体にとって一番適した時機で提供しようとする店主。魚に対する愛を感じました。

適度な吟醸香に米の旨味。良い酒です。

シラカワという甘鯛の一種。甘味が強く、適度な熟成がその甘さをより一層ひきたてています。ううむ、これがタイだとは信じられぬ。脂もコクも最高。絶頂に達してしまいました。

竜飛崎の本マグロ。一本釣りとのこと。マグロを一本釣りだなんて、漁師の筋肉痛が思いやられます。ただし味わいにこれといった鋭さはなく、お行儀の良いマグロといったところ。

フレッシュでフルーティ。後味も爽やかで食中にピッタリ。外人にウケそうですこのお酒。

中トロ。おや、コチラも先の赤身と同じく印象に乏しい。仕入れ次第なのかもしれませんが、マグロヲタには物足りなく感じるかもしれません。

船橋のこはだ。デデーンと特大ポーションで。しかし漬かり具合は実に上品であり、自信作といったところでしょう。サワラの幽庵焼きと同様に、当店のスキルの高さがビンビンに伝わる1貫。

これは魚介類にピッタリですね。キリっとした味わいなのですが、繊細な甘味も残ります。温度を上げて飲むのも良いかもしれません。酒飲みが好きそう。

銚子の金目鯛の松前漬け。一同耳を疑う。え?松前漬け?松前漬けってこういうシステムだっけ?そしてその疑問を払拭する圧倒的な旨味。とにかく甘く迫力がある。ぐわーーーーなんだよくれ超うめーじゃん。

「次は卵かけゴハンで!」と出されたのがコチラ。ああ、魚卵ね、大将洒落っ気あるねと一口含むと本当に卵も流し込まれていました。こういう発想の豊かさと思い切りの良さはさすがです。怖いもの知らずで無鉄砲で、だからオレに可能性があるんだよ、そう語りかけてくれるTKG。

こ、これは、、、我らがおにまるのハウス日本酒。あまりに馴染みがありすぎて、公正不偏の態度をもって評価することができません。私だけが感じる謎の安心感。

大分の赤貝。迫力のあるにぎりです。一方で、見栄えほどの豪気な味わいは感じられず。ちょっとお腹が膨れてきたのも影響しているかもしれません。

千葉のエビ。これ私アガります。30センチ離れていても感じる海苔の香り。10センチまで近づくとエビ特有のセクシーな香り。シャリはほんの少しだけで。エビと海苔の歯ごたえをザクザクバリバリ楽しむ最高の手巻きでした。

甘味と旨味がたっぷり。色々と濃厚でマッチョな一杯。それにしても私、良く飲みますねえ。自分で写真を見返して、今、ひいてます。

カワハギ。こちらも程よい熟成が見事です。肝の脂の香りを鼻腔にひきつけつつ、ひとくちで含むとコクが身体中に広がります。柔らかく、優しい。

対馬のアナゴ。ホクホクとほぐれる旨さ。ツメは上品で身の透明感を邪魔することなく、これが鮨だと言わんばかりの完成された1貫です。

お椀は意外と標準的。特に印象に残っていません。

カンピョウ旨し。穏やかな甘さが海苔の香りと米の旨味をひきたてます。1日中寝てて起きた時のじんわりとした多幸感に近い。カンピョウ巻きって充分にごちそうなんだなあとシミジミします。

ギョクは完全にスイーツ。たっぷりと甘く、卵黄の風味が舌の上下にまとわりつく。私は大好きで何個でもイケますが、好みは別れるかもしれません。

モダンな日本酒もご用意。口当たりがスムーズで、甘味と酸味のバランスが素晴らしく、暴飲暴食を重ねた後においても軽快に飲み進めることができました。

ここからはコース外、追加で注文です。もう暫く来ることができないと思うと満腹でも詰め込もうとしてしまう謎の脅迫観念。

このわた。ぬわーーっっ!!お父さんまたお酒飲んじゃうぞ。ふりだしに戻る。文句ナシに美味しいですが、手巻きではなく前半にツマミとして出してもらうのも、酒飲みにとっては良いかもしれません。

サバ。サバを手巻きで食べるのは初めてかもしれません。そして先ほどの刺身の時よりも印象が全く異なり、サバの脂、大葉の爽やかさ、海苔の磯の香りが渾然一体となって素晴らしい手巻きでした。シャリは少なめという贅沢感もたまらない。

イクラ。間違いなく美味しいのですが、これまでの数々のスター選手と比べると後塵を拝するかもしれません。料理人って大変だなあ、良いものを出しても出してもキリがない。

〆にカラスミ。ダメ押しです。この一口で我々の機能は完全に無力化されました。見事にらぶぽよな仕込み。このカラスミをフォークとナイフで丸々1本食べることを人生の目標とすることにします。

ぐはー、良く食べ良く飲みました。特殊なルートを確保しているのか、普通の鮨屋では手に入れることができないネタをたっぷり揃えているのはマニア心をくすぐります。

食事の量はかなり多いので、小食な方は事前にお伝えしておいたほうが良いかもしれません。また、酒と合わせてこそのツマミやにぎりが大多数を占めるので、酒飲みと下戸では評価が大きく変わる可能性のあるお店です。

1年先まで予約で埋まっているだなんて一体どんな店だろうと緊張してお邪魔しましたが、思いのほかカジュアルなお店でした。その雰囲気の良さは大将を始めとしたお店の方々の朗らかな人柄によるところが大きいでしょう。気楽でワイワイ楽しめるので、鮨の世界の入門編としてすごく良いお店です。30代の男8人で泥酔ナイトを目指すとか超楽しそう。

一方で、消費者側はもう少し冷静になる必要があるとも思います。仕入れも技術もレベルが高く、価格は極めてリーズナブルという存在は驚異的ではあるのですが、神格化されて1年先まで予約が取れないのはちょっとなあ。

うっかりムキになってしまいそうな狂想曲。デビュー直後にオリコン1位を取って紅白にまでスピード出場してしまう欅坂46のようなお店です。

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5位

たきや (麻布十番、六本木、赤羽橋 / 天ぷら)

1回

  • 夜の点数: 4.0

    • [ 料理・味 -
    • | サービス -
    • | 雰囲気 -
    • | CP -
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    ¥30,000~¥39,999 -

2016/10訪問 2019/08/31

一座建立

リッツカールトン東京45F、しみず。日本一予約の取れない天ぷら店として名を馳せました。そのリッツカールトン東京和食部門の総料理長が満を持して麻布十番に独立。

涼しい1日だったので食前酒のビールをすっ飛ばし、いきなり本番で乾杯。飛露喜。全体的にやや甘く、最初の1杯としてはちょっとアレだったかもしれません。和食ではワインを飲まないと決めているので、日本酒ももっと勉強しなきゃなあ。

前菜。天ぷら屋の前菜で此処まで凝ったものは珍しい。兎にも角にも秋真っ盛りの食器のセンスが愛くるしい。店主が18、19歳ころから買い集めていたものらしいです。すげえなあ。私が18、19歳の頃なんて、ヒステリック・グラマーの服とか買ってたわ。

煮アワビに煮こごりジュレ。あつぼったいアワビを口に含むとプッツリと舌先でとろける。その先にあるのは海の味。これはただの天ぷら屋ではないぞ。

茄子のすりながしにタイラ貝とキャビア。すりながしが傑作。焼き茄子を丁寧に丁寧に解きほぐしたものであるため、液体でありながらも焦げ目の香りが伝わってくる不思議。秋祭りを凝縮した味わいです。

カマスの鮨。「ゆずきち」という、カボスや柚子・オレンジなど種々の柑橘類のかけあわせた珍品で香りをつけています。酢飯の程よい酸味とカマスの焼き目が堪らない。

イクラの醤油漬け。粘着率が高く一粒一粒が婀娜っぽい。どぎつい醤油味は一切感じられる、魚卵の幸せがビンビンに伝わってきます。

もずく。これはまあ普通。私の箸さばきのレベルが低く食べ辛かったです。

それにしても天ぷら屋の前菜でこれである。この時点で当店の実力は本物であると確信。なるほどリッツカールトンの和食を統べていた手練である。

天ぷらに対するトッピングはスロヴェニアの塩、カレー塩、抹茶塩、梅塩、レモン、ゆずきち、大根おろしに天つゆなどバラエティ豊か。パレットのようにお皿に取り分け自由に楽しむことができます。近所の天冨良よこ田のように色々と指示を受けることはありません。

エビ足とギンナン。当店の特色は胡麻油を一切使用せず、紅花油のみで揚げ通すことです。食感が軽く油っぽさを感じさせません。それでも私はクドクドとした胡麻油の香ばしさが好きなので、全体的にやや物足りなく感じました。まあそれは人それぞれの好みです。

才巻エビ。透明感。なるほど確かに素材そのものの味わいを楽しむという意味では胡麻油は不要なのかもしれません。

松茸をキスで挟む。おや、もしかして当店はやや創作系に寄っているのかと感付いた一品でした。松茸の香りが高踏的であり、キスの身がホクホクとして楽しいです。若干キスの火入れが強いかなあ。また、松茸を目前にしてキスの存在感がかなり消えてしまっています。

岩手のホタテ。馬鹿デカい。そしてその有り余るサイズを活かした火入れの妙技。食感のグラデーションが見事であり、なぜこのように調理するのか、熱弁をふるう店主の一幕の名演技も最高のエンターテインメントです。

イチヂクの天ぷらに鴨の生ハム。実に面白い発想です。ただしその独創性は認めつつも、フルーツを温かく食べることを私は好まないので、逆、すなわち鴨を揚げてイチヂクを添えたほうが私は好きかもしれません。もちろんそのようにしてしまっては平均的な天ぷらに成り下がるのかもしれませんが。

目の前で延々にスライスされるトリュフ。ドン引きするほどの量である。今日は人生で一番トリュフを削られた記念日だ。

トリュフの内側は大根サラダにローストビーフ、温泉卵でした。ううむ、ちょっとこれは行き過ぎ。味は悪くないのですが、別々に食べてみたい所です。

萩のアマダイに禁断のウニイクラ。これもちょっと危険球。やりすぎです。この奇観を面前にして、龍吟での食事を思い出しました。それでも外人には大ウケしそうな一皿です。

オクラは粘度が強くいつまでも噛んでいたい一口です。これまでの高級食材のオンパレードに比べると幾分無芸であり拍子抜けというか、安心したところがあります。

和牛ヒレ肉の紫蘇巻き揚げ。シャトーブリアンの天ぷらです。食傷気味になるのを覚悟で口に放り込むと前言撤回、それはそれは見事な味わいでした。まず、肉が旨い。肉そのものが旨いのである。そこへ紫蘇の爽快感が流れ込み、見事な火入れと共に胃袋へと落ちていく。

トリュフ塩も添えられます。ただしこれを付けると味わいが単兵急になってしまう恐れがあるのでお好みで。

澤屋まつもと。酒躯体が逞しくシャトーブリアンに負けていません。それでいてリーズナブル。気に入った。家飲み用に買おうっと。

鳴門のサツマイモ。焼き芋のように甘くノスタルジックな味わいです。塩とつけると甘味がひきたてられ、より一層の味覚に。

天ぷらの締めくくりは才巻エビ。その禁欲的で清澄な様は今夜の饗宴の署名にぴったりでした。ひとつだけワガママを言うとすれば、アナゴを是非とも食べたかった。

ごはんものは天茶。私は味濃い目原理主義であり圧倒的に天丼派。天茶にすると、どうも味わいがボンヤリするので好きじゃないのです。が、今夜をもって考えを改めます。松茸と車海老のかき揚げの天茶。一番出汁で土瓶蒸し風に。

これがもう心に染み入る旨さで適わない。このまま切り取って大英博物館に展示したいレベルです。精髄は出汁。こんなに旨い出汁があるか?思わず身を乗り出して店主に説明を求めてしまいました。

茄子のお漬物も最上。正鵠を射た漬かり具合で今夜の助演男優賞を差し上げます。

天ぷら屋であってもデザートに抜かりなし。メロンにポートのジュレ。優しい生姜が隠し味。これと同じレベルの甘味を出せるグラン・メゾンがどれだけ東京にあるだろうか。

最後に煎茶とわらび餅。シンプルで何でもない煎茶のレベルからも当店の実力が伺えました。

素晴らしい体験でした。これは天ぷら界のトリックスター。龍吟を天ぷらにしたようで、外人が大好きそう。ミシュラン3~2ツ星は当選確実であり、その後の和食界に賛否両論を巻き起こすことでしょう。

接客もパーフェクト。何より店主の人柄が堪りません。彼の柔和で快活な物言いに客の心が通い合い、一座建立の気持ちの良い状態が生まれます。仕込みに恐ろしく手間がかかるのが見て取れる上に1日2回転の営業。仕事の過酷さは筆舌に尽くし難いはずなのに、あの飄々とした雰囲気を出せるのは頭の下がる思いである。

食材を考えると支払いは2人で7~8万円を覚悟したのですが、結果は6万円と少しい軟着陸しました。絶対額としては勿論高値ではありますが、その実は極めてリーズナブル。世界中からの予約争奪戦が始まりそうな予感。

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6位

レストラン タテル ヨシノ 銀座 (東銀座、銀座、銀座一丁目 / フレンチ)

1回

  • 夜の点数: 4.0

    • [ 料理・味 -
    • | サービス -
    • | 雰囲気 -
    • | CP -
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    - -

2016/01訪問 2016/02/23

ビジネスライクな会食に向いているのかも

タテルヨシノに対しては妙は思い入れがあるんですよね。パリでの不遇の時代から星獲得というドラマとか、日本では星をとりまくった挙句あっさりとビストロに落ち着いてそれまでの店を閉めまくったりとか、虚心担懐な行動様式にすごく共感していたのです。

妻もANAの機内番組で吉野シェフ特集か何かを見て、すごく行きたくなったみたいなので、結婚6周年記念は当店に決定。

天井が高い。外資系のホテルのロビーのような雰囲気。銀座四丁目すぐのビルにこれだけの空間を創り上げるのは贅沢この上ないです。

乾杯は当店がPBとしているシャンパーニュ。PBって日用品だとうんざりするけど、ワインだとワクワクしますよねこの矛盾。

アミューズブーシュにシューたち。左はブルーチーズ主体でナッツがたらふく入っていて最THE高。右はグリュイエールチーズが練りこまれているんですが、左に比べるとやや見劣りします。それにしてもこのプレゼンテーションプレートの愛らしさ。60をこえたおじーちゃんのセンスが光りすぎ。

キャビアのゼリー仕立て。キャビアをそのまま出すよりも、上手に海の香りを引き出しているような気がしました。右はタテルヨシノ流のフレンチトースト。これは大人げない。世界のトップシェフが本気でフレンチトーストを作るだなんて美味しいに決まってるジャマイカ。

パンは割と普通です。バターも割と普通です。

ワインは我々が入籍したヴィンテージを指定。したのですが、ワインリストにあるものが片っ端から品切れ中で、さすがの私も血の気が引きました。「ちょっ、ちょっとセラー、見てきますっ!」「ありましたぁっ!」と軽快なシェフソムリエが頼りになる。いずれにせよ、状況に従うのではなく状況を従わせる態度を保ち続けることは重要ですね。

パールに見立てた謎の球体。スプーンでそっと触れるとフォアグラが炸裂。単にフォアグラの身があるだけでなく、フォアグラのムースまでがギュウギュウに詰め込まれており私超アガりました。ピスタチオのソースもほど良い演出で本日一番のお皿です。

セイコ蟹のグラタン。左下は蟹風味のクッキーみたいなのに甲殻のクリーム。右上もカニがたっぷりのジュレに柚子のアワアワ。ここまで執拗にカニに攻め込まれると全面幸福するしかありません。

見て見て!アハハハッ!カニの身がぎっしり!論理や理屈ではなく、ただただ旨い。

タテルの勢いは留まることを知りません。スペシャリテのちりめんキャベツ、フォアグラ、黒トリュフのテリーヌ。なんなんだこれは。キャベツ、フォアグラ、黒トリュフが十二単のように折り重なる。トリュフの量が異例中の異例。上野の413球ならぬトリュフの413枚。

続いてブルターニュ産のヒラメにビスクのソース。ガルニはトランペット茸に白トリュフ。バッカルコーン!全身から湧き上がるこの喜び!私の好物だらけではないですか。ヒラメそれだけでも風格のある味わいなのに、寄り添うソースも負けてない。そして包み込む香りすなわち18禁の白トリュフ。

妻のメインは鹿。フォアグラとトリュフも鎮座しロッシーニ風。くるんと曲がったのは甘味を控えたチョコ。還暦を過ぎた御大の意匠とは思えない芸術性。

私は熊。あまりに逞しい色合いで写真映えるしませんな。味も確実に美味しいのですが、正直なところ一般的グランメゾンの牛ホホ肉と大差なし。これは鹿のほうがアタリだったかもしれません。

合わせるワインはコートロティでシラー。想像していたよりも明るいワインでスパイシーさが前面に出ています。熊の野性味を考えれば、もっともっとドッシリしたものでも良かったかなあ。

デセールの幕開けにお祝いプレートをご用意して下さいました。常日頃かわいい女の子とばっかり遊んで週刊文春が歓喜しそうな生活を送っているのにもかかわらず、なんとかうまくやって来れてます。

アヴァンデセールは柑橘のプリン?カスタード?とジュレ。カラメルのコクと柑橘の香りが調和して素晴らしかった。

モンブランにラムのアイス。星野みなみの声のようにかわいい姿かたち。しつこいようですが、いい歳したオジサンいや、見ようによってはおじいさんのデザインとは全く思えません。

パッカーンとフタを開けると特濃のクリのクリームがとぐろを巻いており、さらにその下には栗を始めとした森の営みが敷き詰められています。ご丁寧にメレンゲまで完璧でした。

ミニャルディーズも手抜きなし。

たわやかなエスプレッソで〆。ごちそうさまでした。

さすが世界のタテルヨシノ。問題なく素晴らしいレストランでした。と、ここで、あれ?っと思った方はご明察。そう、「問題が無い」んですよね。全ての皿は美味しいし、サービスもパーフェクト。支払い金額も相応。欠点が何一つない。100点です。

なのですが、感動も無いんです残念ながら。私が数年後に今夜を記憶しているかというと全く持って自信が無い。ベクトルとしてはひらまつ系列での食後感に酷似しています。

そういう意味で、当店は接待などビジネスライクな会食に向いているのかも。外さないレストラン。思い出を創りにいく、そういうお店ではないなと私は思いました。あ、勘違いしないでくださいね。すごく素晴らしいレストランで、当店を超えるお店は日本では数店もありませんからね。と、なぜか言い訳がましくなってしまいましたが、うん、そういうお店でした。

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7位

ALLIE (麻布十番、赤羽橋 / フレンチ、ワインバー)

1回

  • 夜の点数: 4.0

    • [ 料理・味 3.5
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 3.5
    • | CP 4.0
    • | 酒・ドリンク 4.0 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥20,000~¥29,999 -

2016/12訪問 2023/01/24

ワインという食事の知的部分を担うソムリエの重要性を再認識

今夜は私のお誕生日祝い。麻布十番アリエ。食べログ4.17と高評価。先日のブルガズアダと同じビルです。

シェフはランベリーの岸本シェフの片腕として辣腕を奮った方。メートルはベージュ、ランベリー、ドミニク・ブシェの責任者を歴任と、イチローと本田が独立してタッグを組んだような凄い経歴の小さなお店です。

乾杯はシャンパーニュの宝石のブラン・ド・ブランで。「あたしこれ大好きなの。グラスで良かった?ボトルにする?」と、将来が楽しみな女の子。

アミューズ。左のエクレアはサーモンのリエット。右のシューは鴨胸肉の燻製です。サーモンは穏やかな塩気と豊かな海の香りに食欲が掻き立てられます。他方、鴨肉は大地を感じられる力強さであげぽよ。飾りつけのお花もいいですよね。アミューズだからといって手抜きは一切ナシ。

「お次のワインまでの間、もう少しどうぞ~」とソムリエがシャンパーニュを注ぎ足してくれました。な、なんて気前の良いお店なのでしょう。

天然の真フグのフリット、有明産生海苔のソース。シェフは「東京都公認のふぐ調理師免許を保持し、特殊な日本の食材の調理技術にも精通している」とのことで、意欲的な前菜です。

フグは肉汁が溢れ出る仕上がり。クリアな味わいながらもフグ特有の旨味もしっかりと感じられます。衣はエビせんべいでクリスピーな食感が楽しい。海苔のソースも芳醇な磯の香り。

秋刀魚の軽い燻製と茄子と里芋のプレッセ。壁画のようなプレゼンテーションに思わず唸ってしまいます。

脂の乗った秋刀魚が逞しい。里芋のサクっモチャっ、というテクスチャーと、茄子由来の秋の香りがバランスよく調和し和を以って貴しとナス。

「今夜はたっぷり飲んでいいからね!飲め飲め」という頼もしいお言葉に甘え、ここから先のワインはペアリングでお願いしました。甲州のミネラル感が秋刀魚のコクにぴったりです。パンはシンプルながらも慎み深い味わい。秋刀魚の脂を受け止めるのにちょうど良し。

左上はバター。右下はオリーブオイル。オリーブオイルは乳化させてから固めるなど、手間隙を惜しみません。

黒鮑のヴァプール、セップ茸のソース。鮑の肝とセップ茸のソースがカルピスの練乳割りくらい濃く、酒の消費量が加速する一皿です。鮑の弾力的な歯ごたえに、小宇宙(コスモ)を感じる猛々しいソースをたっぷりと絡めて頬張る至福のひと時。

私はフレンチレストランで日本酒を出されるのを基本的に嫌うのですが、この皿ばっかりは圧倒的に日本酒がお似合いでした。微発泡で個性的に明るい味わい。柑橘系の香りもたまりません。先の鮑と見事なマリアージュです。

「せっかくなので、ワインでも合わせましょう」と、こちらもお出しして頂けました。しかしここは我らが佐藤祐輔の圧勝。

それにしても、ここぞと言うところでの日本酒の使い方が素晴らしい。日本素材に傾倒したレストラン、例えばレフェルヴェソンスなどは日本酒をダラダラと出し続けて来るのでウンザリしてしまうのですが、当店は巧みなワンポイント・リリーフという名采配です。

舞鶴産キジハタの炭火焼き、ソース・ベルモット。最高品質のハタをガガっと炭火で焼き、享楽的な海の脂がしっかりと裡に留まっています。バリっという焼き目が香ばしく、艶っぽい味わい。付け合せの大麦やソースも饒舌で、最高の魚料理です。

すごー!ペアリングでこんな良いの出しちゃうんだ!小売で1万円近くするんじゃないの!?20年前の葡萄がじっくりと熟成され歴史を感じる1杯。いや、1杯ではない。ペアリングと言いつつ、液面が下がって来るとソムリエが気前良く注ぎ足しくれるので、品の無い言い方をすると実質飲み放題なのである。

ナイフは特別仕様。サッカパウは敵をなぎ倒す意匠の刃でしたが、当店はするすると切り裂いていくイメージのナイフです。

蝦夷鹿肉のポワレ、山椒胡椒の香るジュ。手前のモモ肉は赤身がムキムキしており、自由奔放でスポーティな味わい。山椒の香りがアクセントとなり食欲を刺激します。奥のバラ肉は雄々しく大胆。ワインがどんどん進みます。

ピノの深遠な味わいが屈託の無い鹿肉と仲むつまじく調和する。ううむ、見事な料理ならびにペアリングのワインでした。

洋梨のコンポートとキャラメルのムース、柚子のソルベ。ソースはヴァン・ショー(温かいワイン)であり、徹頭徹尾ワインを上手に使うレストランという印象。白眉はキャラメルのムース。品の良い甘さと焦がしたような香り、コク。大好きです。

お誕生日プレートを用意してくださいました。いくつになっても嬉しいなあ。好きな人に好きな料理でお祝いしてもらえる幸せ。歳を取るのも悪く無い。

小菓子はフィナンシェにマカロン、サツマイモのケーキ。最後の最後まで抜かりのないプレゼンテーション。シェフは女性的な感覚を多く持ち合わせているように感じました。

名残惜しくコーヒーを啜りながら、ごちそうさま、今夜はありがとうと静かに告げる。素晴らしい一夜でした。

今のところ麻布十番で一番好きなフランス料理店です。料理はもちろんサーヴィスも完璧。皿出しのテンポも良く、ストレスを感じることが一切ありませんでした。

とりわけシェフとソムリエが名コンビ。心地よい二人三脚です。ソムリエがシェフの料理を熟知しており、的確なワイン選びで料理の長所をさらに伸ばしているように感じました。飲食業界はいきおい料理人に注目が集まりがちですが、ワインという食事の知的部分を担うソムリエの重要性を再認識させてくれるお店でした。

■写真付きのブログはコチラ⇒ http://www.takemachelin.com/2016/11/allie.html

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8位

酒肆ガランス (白金高輪、白金台、広尾 / 創作料理)

2回

  • 夜の点数: 3.5

    • [ 料理・味 -
    • | サービス -
    • | 雰囲気 -
    • | CP -
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    ¥4,000~¥4,999 -

2017/07訪問 2019/08/31

真夜中の炭水化物ほど旨いものは無い

しゅしがらんす、と読みます。オーギャマン・ド・トキオの跡地。キャーヴ・ドゥ・ギャマン・エ・ハナレの2階です。大好きなお店なのですが、気がついたら1年近く間が空いていました。それでも怪しげな空気感と個性的なスタッフの面々はそのままで一安心。

夏の暑い日の2軒目だったので、しおらしくハウスワインのカラフェでスタート。

お通しはおなじみの小桃に野菜をゴニョゴニョしたやつを期待したのですが、今回はシンプルなポテトサラダでした。もちろん美味しいのですが、手の込んだものを期待していただけにちょっぴり残念。

フライドチキン。これが絶品。KFCのスパイシーチキンを2倍複雑にして、もう2倍ややこしくしたような味わいです。揚げたてアツアツでこの瞬間の高揚感は絶大。ジャガイモを薄くスライスして揚げた自家製チップスも傑作。

このような味覚にはビールしかそぐわない。ピリカラのチキンと共にビールを飲み下す幸せと言ったらない。

チキンカレー。ショータイムの始まりだ。当店のカレーは並の専門店のレベルを遥かに凌駕します。とにかくスパイス使いが込み入っており、口に運ぶたびに多彩な味わいが広がります。

麻婆麺。暴力的なほどのパクチーと山椒。先のフライドチキンやカレーを超越する数々の辛味。もう満腹なはずなのに、ついついダストシュートのように口に放り込んでしまいます。

真夜中の炭水化物ほど旨いものは無い。麺を食べきった後は、残ったタレと肉にゴハンを混ぜ込んで下さいます。これが旨いのなんのって。

■写真付きのブログはコチラ⇒ http://www.takemachelin.com/2017/07/gara.html
【2016年8月】
前回の記事の反響が非常に大きく、「あの店は何だ?連れて行けこのやろー」というご依頼が殺到中。

しゅしがらんす、と読みます。オーギャマン・ド・トキオの跡地。キャーヴ・ドゥ・ギャマン・エ・ハナレの2階。なんとも不気味なアイコン。何もかもが怪しい。

暑い1日だったので、まずはビールで乾杯。店内をぐるりと見渡すとその殆どが常連。カウンター越しにスタッフと会話を楽しむ余裕。

お通しはおなじみの小桃に野菜をゴニョゴニョしたやつ(?)。小桃は穏やかな味わいながらカリっとした食感で酒宴の号砲に最適。野菜をゴニョゴニョしたやつは何かよくわかりませんでした。前回のホウボウのリエットのほうが好き。

フランス人を見習ってロゼ。ボトルが4,000円を切ってくれるのは本当に嬉しいです。ちなみに日本酒もボトルで飲むことができ、亜麻猫が720mlで5,500円。コレ系のお店としてはリーズナブル。

マッシュルームのサラダ。厚切りのフレッシュなキノコにパクチーとセロリ。セロリは小粒ながら香り高く存在感が抜群。

パートフィロ(ガランス式焼餃子)。パートフィロとはギリシャ発祥の小麦粉生地。焼き目が香ばしく軽やかなお好み焼きのようです。ソースはシェリービネガー主体。目が覚めるような鋭い酸味が後を引く。

串物もあります。うずらの卵は自家製マヨネーズにて食す。これはまあ、普通のうずらの卵でした。海老のソテーはサルサ・メヒカーナで。トマトとタマネギの新鮮さに青唐辛子の稲妻感が駆け抜ける逸品。

前回もそうでしたが、当店は他のお客さんが何を食べているのかに目を光らせ、ビビっときたものにつき「あれと同じものを」と注文するのが良いでしょう。このハンバーグはまさにそれ。

一息でナイフを入れると肉の赤身がぽぽぽぽーん!なんでも二層構造になっているらしく、内側はレア状態の粗挽き牛肉、外側はミンチの豚肉です。ありそうでない合挽きハンバーグ。

ゴリラ系の料理にはゴリラ系のワインを。ドックドクに黒く濃いワイン。なにこのマッチングの妙。最高かよ。

予想外にフレンチフライもお出し頂けました。「ハンバーグにはポテトって決まっているでしょう?」とニヤりと笑う料理人。うーん、客のツボを突いたお店である。

〆の食事にはカレーを。誘惑的なスパイスの香りに誘われて思わずスプーンにテンコ盛りにしてしまう。一口パクり。ウェーハッハッハ、旨い!とにかくスパイス使いが複雑で難解。口に運ぶたびに多彩な味わいが広がります。

カレーにはビールだ!ただいま!それにしても餃子にハンバーグにカレー。なんとも子供っぽい構成の注文となってしまいましたが、その味わいは子供の頃に食べたそれらとは全くの別物。全てがハイセンスでややこしい。食べる18禁。家の近所に当店があれば毎日がエブリデイ通ってしまいそうです。

オマケでチェリーを出して頂けました。黒系果実のふくよかさをグラスに残しておいたカベルネで飲み下す。今日も良い1日でした。私はとっても幸せな毎日を過ごしています。お母さん僕を産んでくれてありがとう、そして、ありがとう!

■写真付きのブログはコチラ⇒ http://www.takemachelin.com/2016/07/blog-post_27.html

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【2016年6月】
しゅしがらんす、と読みます。オーギャマン・ド・トキオの跡地。キャーヴ・ドゥ・ギャマン・エ・ハナレの2階です。

特徴的な調理場をぐるりと取り囲むカウンター席はそのままの居抜き。照明がエロティックに落とされており、怪しげな空気感。スタッフの方々もそれぞれ雰囲気があり、個性的なお店です。

ワインやビールはもちろんのこと、日本酒や焼酎ひいては耳慣れない国の耳慣れないお酒まで、飲み物のラインナップが膨大です。完全に酒飲みのためのお店。

肉(豚だっけ?)とホウボウのリエット。何この手の込んだお通し。ホウボウをこのように食すのは初めてです。しかもきちんと旨い。一口で今後の展開に期待を持ちました。

ちなみにリエットの隣にあるオリーブみたいなのは「モモ」と聞こえた気がするのですが、いわゆる桃の味わいとは異なり、歯ごたえのあるオリーブのようで面白かったです。

カニクリームコロッケを注文。ザクザクと粒子が大きいパン粉と共に、じっくりと揚げられています。

開けて驚き、蟹肉がギッチギチに詰まっています。RRRにしろ、最近のカニクリームコロッケ業界はふんだんに蟹肉を使用することが多いですね。こういう解かりやすい方向性は大好きです。

そのままでももちろん美味しいのですが、「スーパー特撰太陽ソース」に浸すとこれまた格別。ソースの熟成感が堪らない。市販品でここまで濃厚で複雑な味わいを具現化できるのは素晴らしいですね。また、ソースを自作することに意固地にならず、「旨けりゃいいじゃん」と出来合いのソースを躊躇無く客に出すシェフの姿勢も合理的。これで焼きそば作ったら最高だろうな。。。

ワインをボトルでもう1本。いかにも業界人が好みそうな雰囲気ながら、ワインは3,000円代からと懐に優しい。

隣席から漂うスパイスの香りが魅力的すぎて思わず注文。南インド風のカレーです。一口食べて驚き。これは本物だ。スパイスの使い方がややこしすぎる。複雑系の極み。普通の日本人では表現できない味わいです。思い切りの良い辛さも見事。街のなんちゃってインドカレー屋は当店に修行しに来るように。

スパイスで食欲に火がついてしまったのか、黒板に躍る「麻婆麺」の3文字に抗えない。これでもかというパクチーに、山椒の香りが大爆発。数々の辛味が胃袋を刺激し、一心不乱に食べてしまう。と、唐突に、食べている途中で、お店のかたがニヤニヤと一旦お皿を下げていく。

なんとゴハンを混ぜ込み、ソバメシ風にしてくれました。最高かよ。満腹ながらもウマイウマイウマスギルと一気に掻き込んでしまいました。めでたしめでたし。

素晴らしいお店です。分類としては居酒屋に入るのかな。とにかく料理の種類が豊富で、洋の東西を問わず多彩な味わい。この店で一通りのメニューを試せば世界一周旅行を疑似体験できることでしょう。次回はおなかを空かせて、旨そうなモノを片っ端から注文しよう。

努力ではどうにもならないセンスを当店に感じました。これは通い詰めてしまいそうだ。

■写真付きのブログはコチラ⇒ http://www.takemachelin.com/2016/06/blog-post_19.html

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9位

麻布・れとろ (麻布十番、六本木、広尾 / フレンチ、ワインバー、創作料理)

1回

  • 夜の点数: 3.5

    • [ 料理・味 -
    • | サービス -
    • | 雰囲気 -
    • | CP -
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    ¥10,000~¥14,999 -

2016/08訪問 2016/09/29

素晴らしいお店です。何度でも行きたい。オススメオススメオススメです。

【2016年8月訪問】
鮎のムース、ホップ風味。鮎の苦味とホップの苦味が同期して絶妙なバランスです。バゲットにムースをベッタベタに塗りたくり、一口で頬張って泡で飲み下すのは最高の娯楽。今夜も楽しくなりそうです。

クスクスサラダとスイカのマリネ、あじ・かつお・たこ添え。クスクスのホニョホニョとした食感にスイカがズバリと割り込み、太陽の光溢れる味わいです。マリネの度合いも的確で、魚介類がクスクスの中で踊る。本日一番のお皿です。

ホッキ貝とマカロニサラダ。こんなに上物のマカロニサラダがあるか?臭みなど一切ないクリアなホッキ貝にマカロニサラダの懐古的な味わいがベストマッチ。我が心のマカロニサラダランキング1位に当選確実です。

とうもろこしのムースと鶏レバーソテー。とうもろこしの凝縮感に心地よい甘さ。穀物だけでここまで糖分を引き出せるのですね。他方、レバーの力強い鉄分に旨さったらない。ううむ、ビールが飲みたくなってきたぞ。

焼きなすの冷製とピーマンのブルーテ。焼きなすは日本料理店で出されても十二分に通用するような高潔な味わい。ピーマンのブルーテは懲りすぎて私の味覚の手に負えず。難解な料理でした。

イワシ・ズッキーニ・トマトの重ね焼き。わんぱくなイワシとトマトの爽やかさが調和し思わず唸る。これは日本人なら絶対に好きな味だなあ。オーブンでカリカリに焼かれたカリカリも心地よいアクセント。

メインは鴨胸肉のスパイスロースト。これモロ好み。カレーせんべいのようなノスタルジックな味付けが元気一杯の鴨を引きたて元気が出る。やはり当店は十番において私のトップ3に入るフレンチレストランです。

バナナのタルトとガトーショコラ、ココナツ、パッションフルーツのムース。ド定番の直球勝負です。文句なしに美味しい。もっとふざけた、すなわちOLが1秒でときめくような装飾的デセールも試してみたいですね。

お茶をたっぷり頂いてごちそうさまでした。

■写真付きのブログはコチラ⇒ http://www.takemachelin.com/2016/08/blog-post_18.html


【2015年2月訪問】
雑誌等には一切掲載されていないという、なかなか足が向かないポジションだったのです。

十番の外れ、住宅街で異彩を放っている一軒家。

普通の民家をリフォームした独特の構造。靴を脱いで2階に上がるのはチョイ面倒。

確かに「れとろ」な雰囲気。霧笛楼をコンパクトにした感じです。

シャンパーニュは爽やかでキリっ。泡が繊細で好き。しかし連れはイマイチとのこと。味覚って不思議ですな。

アラカルトが豊富で死ぬほど悩んでいたらシェフがわざわざ2階に上がってきてくれて、一緒に相談。結果、アラカルトで目に付いたものを全てコースに組み込んでくれることに。なんて良心的な。

白子を塩茹でしたものに百合根、トマトソース。うーん、和食かイタリアンみたい。私はバターでこってりしたやつのほうが好きかな。

おお、箸がある。やはりドンズバなフレンチとは違うのかもしれません。

パンは普通。

寒ブリのグリル。レアさ加減がたまりまへん。あっさりとした味付けで、鮨屋に通じるものがある。ポーションもたっぷり。大満足です。この時点で当確です。

グラスで白をお願いすると、全部もって来てくれて試飲して良いとのこと。神である。というか試飲の量も結構多くて、3つ合わせると1杯分ぐらいあるんじゃ?

というわけでコチラ。全部無料で味をみた上での判断だから満足しないわけがない。

キッシュはポッテリふわふわなプリン状で、上に削ったミモレットを散らしてあります。抜群に美味しかった。20秒ぐらいで食べきった。

ヒゲダラにホタテ、魚介のエキスをたっぷり吸ったリゾット。ああ、旨い。ヒゲダラのムッチリとした食感とパリっとした皮目、少し焦げた香ばしさ。ホタテの食感。旨味。全てにおいて完璧です。

例によって試飲会。酔うってば。

メインに合わせてヘビー級を選びました。そう、このお店は自分でワインを合わせる楽しみがあります。4~6人で来てもワイワイ楽しそう。ここで合コンしたら死ぬほどモテるぞ男子たち。

ハラミのステーキ。恐らく150g超。原始人になった気分。美味しいよう。ワインをどないかしたバターもアクセントに良い。ガロニ(付け合せ)にまで牛肉が入っていて肉食獣です。

デセールはイチゴのタルトにホワイトチョコのクリーム。きっちり量もあってすばらしい。キルフェボンなら700円ですね。そういえば代官山からタルト屋が一掃されててびびった。

お茶はなぜか台湾茶。小菓子のチョコがローズマリー、アニス、ピンクペッパーの味で面白かった。お茶に合う。

以上、素晴らしいお店です。何度でも行きたい。オススメオススメオススメです。

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10位

ロッツォシチリア (白金高輪、広尾 / イタリアン、バル、ワインバー)

1回

  • 夜の点数: 4.0

    • [ 料理・味 -
    • | サービス -
    • | 雰囲気 -
    • | CP -
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    ¥10,000~¥14,999 -

2016/01訪問 2019/08/31

ドンチッチョの美点を保持した上で、新たな世界を四の橋の地で創り出す

ドンチッチョ卒業生のお店。四の橋商店街の、まさに四の橋すぐそこに立地。下町風情溢れる商店街を抜けた開放的な場所にあるので目立ちます。「あたし、しょっちゅうここの前を通ってて、いっつも満席なのが見えるから、興味あったんだよね」と連れ。

そう、四の橋はサンダル履きのおっちゃんがジャージ姿で普通に歩いている街である一方で、アルシミストやルイジ、鈴木屋、オーギャマンドトキオなどの突拍子も無い名店が綺羅星の如く連なるのが面白い。

シチリアの泡で乾杯。炭酸ガス注入方式ながら、思いのほか気泡が繊細。辛口の酒質と相俟って美味しかったです。

挨拶代わりの一皿。茄子のカポナータ。ラタトゥユとカポナータを混同しているお店をたまに見かけますが、当店のカポナータは正真正銘のそれ。丁寧に揚げられた茄子が程よい酸味と甘味に味付けられ、ニスを塗ったような鈍い輝きを放つ。旨いっ!

フォカッチャは雑味の無いプレーンなもの。気軽にパクパクと食べちゃうの。

「絶対にこれは注文したい!あとはキミに任せるわ」と、連れが情熱をもって取り組むペコリーノチーズのフリット。わお!このビジュアルきゃわたん!「今が最高に美味しい瞬間です!早く食べて!」とスタッフもテンションが高い。そしてその勢いに違わず見事な味わいでした。シンプルだけどチーズそのものの味が濃く、揚げはどこまでも軽い。ひとりで1ダース食べたい。

ドンチッチョでも名物だった、鰯とウイキョウと松の実のスパゲッティ。太目の麺で小麦を噛み締め、松の実の香りを感じながら、鰯の苦味をワインで洗い流す。最THE高。総ての素材が胃袋で踊り思わずおかわりしたくなります。

お店の方と次のワインを相談。目の前に何本かお持ちくださり丁寧にご説明頂きました。「エレガント」という響きに誘われフラッパートとネロ・ダーヴォラの混醸。このセパージュでエレガントとかほんまかいなと疑念を持っていたのですが、確かにエレガントでした。果実味が豊かな一方で、酸味の切れも良い。

カジキマグロのインボルティーニ、オレンジのサラダ添え。何だろう、特定できない様々な食材が緻密に混ぜ合わされカジキマグロを包みます。素晴らしき味覚の大合唱。オレンジの爽やかさも風流の極み。美味しかった。もうちょっとポーションがあれば完璧。

ドルチェはかなりの種類がありました。いずれも魅力的で、「コレとコレとコレが気になるけど決められない…」と頭を抱える連れに、いいじゃん全部食べようよ、と提案し表情にぱっと花が咲く。なるほどだから私はモテるのか。

まずはイタリア名物カンノーロ。チーズの香りとコクが控えめな甘さと絶妙なバランスを保っています。

イチゴのセミフレッド。キメ細かい舌触りにクリームのコク、イチゴの酸味がお見事です。

〆はミルクのジェラートのアフォガード。ジェラートは一般的なそれよりも硬めに設定されており、エスプレッソを流しかけてもしっかりと形を留めます。濃い液体に甘いミルクが一体となって、これは新たな飲み物として特許庁に出願せねばなるまい。

素晴らしいお店でした。個人的にはドンチッチョよりも全然好き。ドンチッチョの美点を保持した上で、新たな世界を四の橋の地で創り出しています。

客層もいいですよね。ちょっと大人で食べこんでいて、まあ、旨いもの食べてみんなで楽しくやろうや、そんな空気感がゲストのみんなたちから滲み出ています。それでいてリーズナブル。完璧だ。近くにあれば、毎日でも通いたい。

■写真付きのブログはコチラ⇒ http://www.takemachelin.com/2016/01/blog-post_27.html

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