体と心に染み入る温かい確かな何か : 温石

茶懐石　温石さんへ春(初夏)のお昼に訪問です。
専用駐車場もご用意されていますが
少し時間があったので「アクアスやいづ」をぶらり。
富士山や海辺の景色や草花、生物を楽しみ
テクテクと徒歩で向かいました。
(アクアスやいづからは徒歩10分弱でした)

入り口付近ではお弟子さん(とてもカッチリ)が
とても丁寧な挨拶をくださり
女性のスタッフ様から笑顔でお迎えいただき中庭を通り
カウンター席へご案内いただきました。
当日のゲストは我々を含めて5組8名。一斉スタートです。
目前には仄かにオレンジ色を白く纏った炭達が。
焼き場前のお席でした。

以下、当日のラインナップです。

●鯵の砧巻き
●ホワイトアスパラガスのお出汁
●ホワイトアスパラガスとタイラ貝の炙り
●ジンドウイカの炙りとルコラのお浸し
●花鯛と平茸のお椀
●ヒラマサとアオリイカのお造り
●葉生姜の揚げ真薯
●伊勢海老
●お口直しのフルーツトマト
●金目鯛の鱗焼(実山椒醤油と共に)
●カブ
●蛤と春野菜
●米(煮えばな→カマスご飯→オコゲご飯)
●蛤のお出汁のにゅうめん
●水菓子(グレープフルーツと紅茶のゼリー)
●春菊のお餅
●抹茶

◯緑茶(運転がある相方様用)
◯富士スパークリングボトル
◯初亀からからべっぴん(一合)
◯風和の温燗(半合x2)

春の地元藤枝の地酒
初亀のからからべっぴんの冷やからスタート
器は数種のグラスやぐい呑みから好みの子を選べます。
ガスありのお水が富士だったのに拘りを感じました。
私も好きなので嬉しい。ラッキー。

トップバッターは鯵の砧巻き
中央には葱、胡麻、米麹。
焼津で獲れた鯵を酢漬した大根に包まれて。
手前には一寸の塩茹でそら豆が。皮ごと食べられます。
鯵が驚くほど上品でした。

続いて白アスパラガスのお出汁がお猪口に入って登場。
これが本当に好きだった。滋味深い。深い。ディープ。
青さよりもトウモロコシのような香ばしさというか、
でももっと控えめな甘さを感じ。
三倍くらいの大きさのぐい呑みで飲みたいと思った。

炭で炙ったホワイトアスパラガスとタイラ貝。
これは正直、タイラ貝よりもアスパラガスに感動しました。

ジンドウイカ(焼津獲れ)の炙りは
耳とゲソの部位毎に炙り方を変えて。
イカ墨塩と共にいただきます。
相方様はゲソ旨い！ゲソ旨い！と連呼していました。確かに。
ルコラのお浸しは自家製のマスタードソースと共に。
ルコラをお浸しで頂くのは初ですが食感残してシャクリ。
香りもちゃんと感じられ楽しめました。

花鯛(焼津獲れ)と平茸のお椀は柚子の花びらを添えて。
お店の庭先で摘んだとの、この柚子の花びら。
食すのでは無く、香りを楽しむ用とのご説明あり。
確かに花びらが小ぶりなのに硬くしっかりしてます。
そして香りパワーが凄い。
隣席のマダムが「ジャスミンみたい」と仰り、真に同感。
茉莉花の香りに似てると感じました。

お造りはヒラマサとアオリイカ。
ヒラマサはしゃぶしゃぶできるくらいに薄く引かれてました。
馬鈴薯の酢漬けと山葵、ハマボウフウが添えられて。
アオリイカはねっとり舌に絡みつく。好き。
ハマボウフウにも感動しました。近くの浜辺の野草とのこと。
漢字だと「浜防風」なんですね。
語彙が乏しくてもどかしいのですが
芹のような爽やかさとディルのような華やかさ。
そしてほろ苦さを合わせ持つ、力強い香草だなと感じました。

葉生姜の揚げ真薯は中央の葉生姜がシャクリ。
簡単に歯を進められて瞬間に香りが放つ。
辛味はそれほどなく。

軽く炙られた伊勢海老(駿河湾)は自らの味噌ソースと共に。
山葵と紫蘇の花、揚げられたケールが添えられてました。
ケールを揚げるのも面白いですね。
味がしっかりしてるから風味がしっかり残ってる。

此方のシグネチャーディッシュ。金目鯛の鱗焼。
炭加減も距離も実山椒醤油ソースの加減も。
やはり少しピリッとした空気感あり。代わり口にした瞬間。
相方様も私も同時に顔を見合わせて目をまんまるに同じ反応
「かわ！」と、同時に呟いた。夫婦ですね。
本当に表現出来ない美味しさ。
というか、多くの方々に食べてみて欲しい。
感想をお互いにシェアしたい。とてもとても好きです。

お口直し第二弾はカブ。
入店時からずーっと遠火でいろんな煙を浴びてたカブ。
最後は直に炭の中でギュッと縮ませてのご提供。
かぶりつくと水分は失われておらず、ジュワッと。
でも甘く。外側はなんとも表現し難い香りで。

大きなハマグリと春野菜の和え物。
フキ、ワラビと共に。
ほどなく新生姜と一緒に炊いた煮えばなのお米も楽しかった。
香り豊か。
お味噌汁もお新香もにゅうめんもおこげも、
ひとつひとつ有り難く頂戴しました。

水菓子、茶菓子の後には杉山さんが自らおたてになる
お抹茶をいただきました。

驕らず謙虚に目の前にあることをしっかりと。
そんな風に感じましたし
私はそんな姿勢がとても素敵だと思いました。
日本ならではの礼節の美学もそこに感じます。

そして、何よりも、アットホームなお心遣い。

丁度お誕生日のお客様がいらして、ちょっとしたサプライズ。
満場が柔らかい雰囲気で皆でお誕生日をお祝いできる空気感。

お食事開始前にはさりげなく(あくまでもこっそり)
胃のコンディションをリサーチくださるお心遣い。
とってもありがたいです。特に女性の立場だと。
夫婦共々我々は「痩せの大食い」と呼ばれるタイプでして。
スタートから最後のご飯の量まで、おかわり加減も
とても自然にさりげなくご調整くださってることを強く感じ
心より感謝しました。
こんなお心遣いを「おもてなし」や「ホスピタリティー」だと
私は感じます。

日本には「道」の名がつくお稽古事や文化が沢山あります。
茶道、華道、書道、剣道、柔道、弓道、エトセトラ。
共通して私が強く感じることは礼節を貴ぶこと。

茶懐石　温石さんでは
特別な技術を奢り自慢するでもなく
高級食材を見せびらかすでもなく
ただただ謙虚に、思いやりや優しさを以て、もてなすこと。
華美でなく体と心に染み入る温かい確かな何か。
それを強く感じました。

往々にして虚ろいやすく変わりやすいのが世の常ですが
心の拠り所にすら成り得そうな普遍的な確かな何か。
そう。変わらぬ愛情のような。
そんな素敵な場所なのだと。存在に感謝しています。

お伺いできて光栄でした。
またお伺いしたいです。素敵な時間をありがとうございます。
御馳走様でした。