『えーちゃんのランカカレー 1』far longさんの日記

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版下、って知ってますか?
かつて印刷物を制作する際に厚紙に写植やデザインのあたりをつけたもので、こいつを印刷屋さんに手渡すと無事入稿なんてことでひと仕事終えた感アリアリでちょっと一杯やってくか、えーやっていきましょう、なんてそんな役目を果たすモノでした。
ちなみに私は若い頃この版下を駅に忘れたことがあります。
ハッと気づいた時にはまさしく全身から血の気が引いて、電車から駆け下りて階段を数段飛ばしで引き返し無事手元に戻りました。あの時、ほんとに忘れていたらどうなっていたのだろうと思うといまだにアタマの奥のほうがジインっとしますネ。


ある年の残暑厳しい折、そんな嵩張る版下を持って見知らぬ駅に降り立ちました。
その日はまさしく入稿日でえーちゃんが営む印刷所に直接持参するよう会社の先輩に指示されたのでした。

えーちゃんは当時見たところ50年配でキチっとしたパンチパーマをかけ黒目がちな表情がどこか憎めない愛らしい感さえ漂うオヤジさんでした。
当時たまたま小さな信用金庫の支店開設にあたってパンフレットの制作を受注した私は隣に座っていた会社の先輩に「印刷会社はどこか決めてんの?」と尋ねられ正直に「いえ、まだ決めちゃいないですけど…」と答えると「それなら、安くていいとこ知ってるんだよね。ちょっと一度社長呼ぶから打ち合わせすっか」と即決されまぁ安ければどこでも良いかと流れに身を任せることにしました。
すると数日後、会社のウラの喫茶店で紹介されたのがえーちゃんだったわけです。
打ち合わせの要件もそこそこに、えーちゃんと先輩は以前の雀荘での思い出話しを語りだしふたりの出会いがそれこそ雀荘だったことが判明しました。
そのとき手渡されたえーちゃんの名刺には苗字を冠した印刷所の社長と記されており人の好さそうな顔つきでニコニコと微笑んでいるのが印象に残りました。
ちなみにこのときえーちゃんが乗り付けてきたのが真っ赤なフェアレディZで「目立っちゃってたいへんだよ」とか言ってましたが目立ちたいからこういう車に乗っているのではないのか?と思ったことは口に出さずに黙っていました。
そんなわけで遊び好きでどこか人が好さそうで憎めないえーちゃんと仕事をすることになったワケです。

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