『えーちゃんのランカカレー 2』far longさんの日記

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far long

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見知らぬ駅で降り立った私は事前に調べていた地図のコピーを引っ張り出して初めて訪れるえーちゃんの印刷所に向かって歩き始めました。 雑然とした住宅街と町工場みたいな建物が混在した通りを10分ほど歩きそれらしき建物にたどり着きました。 トタン張りの角地でスックとした3階建ての住居兼印刷所のような建物でその街にはありがちな町工場です。
入口らしき引き戸を開けすみませーん!と声を上げても誰もいません。 二階から上が工場になっているらしく機械の動く音と人の気配がしたので目の前の金属製の階段をカンカンと音を立てて上がり戸を開けました。 暗い工場の中には印刷用と思われる機械がザッザッザッと動いており、その傍らにギョロギョロと動く目玉があります。一瞬なんのことかと怯みましたがよく見ると浅黒い肌をした南アジア系と思しき工員が二人作業をしているらしく面食らった私が「あのー…」などと声をかけるとニコリともせずに「シャチョーハウエネ」とさらに上へと続く階段を指し示してくれました。 「あぁ、すんません」とかマヌケな返事をして狭い階段を上がっていくとそこが事務所らしく入室するとニカっと笑ったえーちゃんが「よく来たね、道わかった?」と迎え入れてくれました。 さっそく抱え込んでいた版下を手渡すと控えめな感じの奥さんが冷たい麦茶を出してくれます。ゴクリと飲みながら会社の先輩のこととか話しているといつの間にか流れは先ほど会った工員の話しになりました。
「あいつらさ、よく働くのよ。」
「へー、そうなんですか」
「でさ、やっぱりメシっていうとカレーなんだよな」
「カレー?」
「うん、それでさおれたちが食ってるようなカレーはなんか違うらしくて自分たちで汁っぽいカレーを作るんだけど、そいつがすごくうまいんだよね」
「あぁ、あっちのカレーってしゃばしゃばしたやつですよね」
「そうなんだよね、今度一度食べさせてあげっから」
「えぇ、機会があればよろしくお願いします。じゃ校正は来週の火曜ってことで大丈夫ですよね」
「あ、あぁ、会社に届けるから。後で時間連絡しますわ」
という事でひと仕事終えてまた階下へと向かいます。 途中工場を通りかかると例の南アジア系の工員さん達が作業をしており「先ほどはどうも」と謝意を示しましたがキョロっとした印象的な視線を一瞥されただけで印刷の機械を真剣に見つめていました。 その後、業務は意外にも滞りなく進み校正、再校、校了と相成り無事パンフレットは納品。 当時としては相当な達成感とともに前述の先輩などとともに夜の街に繰り出しました。
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